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「インターネットは絶対大丈夫」は“絶対”か?

フェイスブックのシステム障害から考える 思い込みのワナ

三田地真実 行動評論家/言語聴覚士

拡大フェイスブック本社前の「いいね」の看板=2019年5月2日、米メンローパーク市
 「なんか、フェイスブック、落ちているみたいなんだけど」

 夜はしっかり爆睡派、滅多に夜中にインターネットにアクセスすることはない私なのだが、なぜか10月5日のちょうどそのタイミングでその情報をキャッチした。ふわっと目が覚めてネットにアクセスしたら、入ってきたのだ。枕元の時計を見ると、夜中の2時半ごろ、ちょうど丑(うし)三つ時だ。

 「何か出たのか?」

 うとうとする頭でその後の情報を聞いていると、どうやら世界規模でフェイスブックがダウンしてしまった模様だ。

絶対的な信頼の空恐ろしさ

 知り合いの話では、最初にフェイスブックにつながらなくなったときに「自分のスマホの問題だと思って、あれこれいじった」とのこと。朝、yahoo!ニュースのコメント欄をパーッと見ると、同じように考えて行動した人がいたことがわかった。

 自分のスマホがおかしくなったと思ってたよ。スマホの電源落として電源入れ直してを3回やったけど改善されなかったから諦めたけど。電源の入れ直ししか方法思い浮かばんかった。
 再起動、アプリを落とすなど何回もやって、ダメだったので、自分のスマホだけがおかしいんだと思って、待ってればいいものを一回アンインストールして、再インストールして、アカウント情報を覚えてなくて、2度と入れなくなるというドツボに入った。
 自分だけかと思ったら世界規模だったのか。FB(フェイスブック)のサーバーが応答してないみたいだけど、原因不明の状態が結構続いているよね。早期復旧を期待しています。

 あのフェイスブックが落ちるとは思っていない、つまり絶対的な信頼がある、ということに空恐ろしさを感じた。「そんなに信頼しきっていいのだろうか?」

 フェイスブックが落ちたこともそれはそれで大問題だが(まあ、今回は数時間後には解決したようだが)、何か問題が起きたとき、どこにその原因を求めるのか。それには、人間の思考プロセスがいかに関係しているかを、今回の事例は浮き彫りにしたように思う。

 それまでネット上でスムーズに稼働していたもの(フェイスブック)に突然何らか不具合が生じた(アクセスできなくなった)とき、ICTにそれほど強くないごく普通の人(含む自分)が考え得る要因は大きく二つ。「フェイスブックに問題がある」あるいは「自分の使っている端末機械(スマホ)に問題がある」だ。

 ある一定数の人は前者が原因とは夢にも思わず、後者を要因と仮定して動いたことが私の知り合いの情報やコメントからも見てとれる。裏を返せば、それは「あのフェイスブックが落ちるはずがない」というある意味絶対的な信頼をフェイスブックに寄せているためで、前者は考え得る要因の一つとして、候補にもなっていなかったと言える。

色んな場面で高まるインターネットへの依存

拡大オンライン学習=shutterstock.com
 フェイスブックが落ちた一連のプロセスに遭遇して、コロナ禍に全世界が翻弄(ほんろう)され始めた昨年の春に、とあるファシリテーターの集まりで「今、不安に思うこと」をテーマに話をした(もちろんオンライン会議システムを使って)ときのことを思い出した。多くの大学が一斉にオンラインで授業配信を行うように舵(かじ)を切っていた時期で、リポートの提出や定期考査までオンラインと、インターネットを活用する仕事の形が瞬く間に広がっていた。一般企業においても、リモートが強く推奨されていた時期だ。

 先の「今、何を不安に思う?」という問いに対し、対話を大事にするファシリテーター仲間同士だからと、「今、オンラインに頼り過ぎているのが怖い。万が一、インターネットが落ちてしまったときのことまで考えて、動いておかないとダメではないかと思う」と素直に本音を伝えた。すると、1人から「そんなこと“絶対”ないわよ」と一蹴された。「え?」と一瞬思ったが、「この人にこれ以上話しても無理だ」と、それ以上、言葉を発すること気力自体が失せた。仮にも対話を促進する役目を担うファシリテーターを標榜(ひょうぼう)する人とは思えない頭ごなしの否定的な反応にびっくりした、というのもある。

 私自身は、オンラインでの会議システムを使った授業運営は2010年ごろから行っていたので、他の人から見れば相当なオンライン推進派に見えるであろう経歴だ。その恩恵にあずかってきた私が「こんなに皆がオンラインに頼って、いきなり全部が駄目になったらどうなるのだろう?」という疑問が湧き起こり、恐ろしさを感じたのである。

 しかし、後になって落ち着いて考えてみると、おそらくその人も「インターネットに対する絶対的な信頼」があるからこそ、そういう反応になったのだろうと推測できる。ちょうど、今回のフェイスブックダウンのときに「まず、自分のスマホをあれこれいじってしまった」ように、である。

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筆者

三田地真実

三田地真実(みたち・まみ) 行動評論家/言語聴覚士

教員、言語聴覚士として勤務後、渡米。米国オレゴン大学教育学部博士課程修了(Ph.D.)。専門は応用行動分析学・ファシリテーション論。2016年からオンライン会議システムを使ったワークショップや授業を精力的に行っている。2011年星槎大学共生科学部教授、2013年より同大学大学院教授。著書に「保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック」など。教育雑誌連載と連動した「教職いろはがるた」(https://youtu.be/_txncbvL8XE)の動画配信中!

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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