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海底活火山のモニタリングの議論を深めよう 大規模噴火につながる前に

福徳岡ノ場火山の噴火から考える

浦辺徹郎 東京大学名誉教授 国際資源開発研修センター(JMEC)顧問

拡大海底火山・福徳岡ノ場が8月に噴火して発生した軽石が安田漁港に漂着し、海面を覆い尽くしていた=2021年11月2日午前10時30分、沖縄県国頭村、諫山卓弥撮影
 10月頃から大量の軽石が南西諸島に漂着しはじめ、さまざまな被害をもたらしている。また、その被害が本州や四国にも広がっていくのではないかとの不安が広がっている。一方で、産業技術総合研究所地質調査総合センターなどを中心に、噴火の実態の解明や軽石の分析がなされ、次第に多くの情報が集まりつつある。

ポンペイを埋没させたプリニー式噴火か

拡大2021年8月13日、海底火山「福徳岡ノ場」付近で確認された噴煙=海上保安庁提供
 ここで事態の経緯をおさらいしてみよう。噴火が起こったのは今年8月13~15日。場所は小笠原諸島の硫黄島の南方約60キロメートルに位置する海底火山、「福徳岡ノ場火山」である。この海底火山はこれまでたびたび噴火を繰り返してきたが、今回の噴火は噴煙柱が成層圏に達するほどの大規模爆発噴火であったようだ。

 このような形式の噴火をプリニー式噴火と呼び、西暦79年に古代ローマのポンペイの街を埋没させたヴェスヴィオ火山の同様の噴火を記録した人の名から名付けられた。プリニー式噴火の噴煙柱には大量の軽石や火山灰が含まれており、それが重力で降下して海底に堆積(たいせき)する時に、一部の軽石が海水の表面に浮かんで、「軽石イカダ」を作ったと考えられる。

成層圏まで届く噴煙柱、巨大な「軽石イカダ」

 このような軽石イカダの発生はそれほどめずらしいことではなく、この100年間に世界で20回足らず観測されている。軽石イカダは風や波により移動、拡散する。別の海底火山の噴火で作られた軽石イカダの漂着記録によると、その移動速度は一日当たり8〜24キロメートルと推定されており、2カ月で最大1400キロメートル移動することが予想される。今回のケースでも2カ月経った10月13日に1300キロメートル離れた沖縄本島に到着した。

拡大2021年8月15日に撮影された福徳岡ノ場の新島。噴出物が海上に流れ出ていた=海上保安庁提供
拡大福徳岡ノ場の周辺には、波の浸食で崩れた軽石が帯状になって漂っていた=2021年10月15日午後、東京都小笠原村、朝日新聞社機から、恵原弘太郎撮影

 今世紀最大の海底火山の噴火は、2012年7月18日にニュージーランド北島の北1100キロメートルにあるハブル海底火山で起こったものと考えられる。この噴火では面積が4400平方キロにおよぶ広大な軽石イカダが生成され、1カ月で12万〜27万平方キロに拡大した。流れるにつれ、イカダは長くて薄いリボン状に引き延ばされ、3カ月後にはその大きさは衛星写真で捉えられる限界である直径250メートル以下になったことが知られている。これは移動中に軽石同士がこすれ合い、角が丸くなって大量の岩石クズを海底に堆積させると同時に、浮力を失って沈降したためと考えられる。

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筆者

浦辺徹郎

浦辺徹郎(うらべ・てつろう) 東京大学名誉教授 国際資源開発研修センター(JMEC)顧問

1976年東京大学理学部系博士課程修了、理学博士。東京大学教授(地球惑星科学専攻)、国連海洋法大陸棚限界委員会委員、文部科学省科学技術・学術審議会委員・海洋開発分科会長などを歴任。専門は海底資源、海洋地質学。内閣府SIP「次世代海洋資源調査技術」プログラムディレクターなど海洋に関する多くの研究計画を実施してきた。現在、認定特定非営利活動法人アースウォッチ・ジャパン理事長。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです