福徳岡ノ場はどのような火山なのか
2021年11月17日
大量の軽石が南西諸島に漂着して、被害を起こし、注目を集めている。この軽石は黒潮にのって本州にも到着しつつある。この被害をもたらした火山について紹介したい。
日本の火山はプレートの沈み込み帯に形成されている。海溝に沿って海洋プレートが沈み込むと、沈み込まれるプレートの上に、弧状の火山の列ができる。
日本の南では、伊豆小笠原海溝に沿って、太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込むことによって、東京から南へ、伊豆大島、三宅島、八丈島と続いていく伊豆小笠原弧が形成されている。
海上保安庁の定義によると、海底火山及び火山島を海域火山と呼ぶ。海底火山が成長すると山頂部が海面に現れて火山島となる。
ここで注意したいのは、火山島は巨大な海底火山の山頂部に過ぎないと言うことである。たとえば、西之島は現在、東西2.2キロ、南北2.4キロ、高さ250メートルの島に成長したが、この島は、東西南北ともに20キロ以上、高さ2500メートルの巨大な海底火山の山頂部である。
福徳岡ノ場の場合、周辺の地形はさらに複雑だ。まず、福徳岡ノ場と南硫黄島は連続した火山体と考えられる。
南硫黄島の北の海域には、北福徳カルデラと呼ばれる長径16キロ短径10キロの楕円(だえん)形の海底カルデラがある。カルデラとは、巨大噴火で大量のマグマが噴き出した後に空洞ができて、そこが陥没してできた地形のことだ。
南硫黄島は北福徳カルデラのカルデラ壁の一部を形成しており、福徳岡ノ場はこの北福徳カルデラ内の中央火口丘と考えられている。
福徳岡ノ場は、過去にも噴火記録があり、最近では1986年に新島を形成するような噴火を起こした。しかし、その新島は波で削られ2カ月で海没している。
2021年8月13日の6時20分頃、気象衛星ひまわりが福徳岡ノ場からの噴煙を観測した。その噴煙高度は16キロに達していた。海上保安庁は16日に航空機による観測を実施した。既に噴火は終了していたものの、直径約1キロの東西に括弧(かっこ)型をした二つの新島を確認した。国土地理院によると、新島の東側の陸地は9月5日にはすでに海没した。今回の噴火は3日間と極めて短期で、噴出物や噴火期間は1986年の噴火と似ている。
被害を出している大量の軽石は、この短期間に噴出して漂流したものだ。
軽石は爆発的な噴火で噴出したマグマが、急冷されて固まったものである。地下のマグマには高い圧力のために、大量のガスが溶け込んでいる。噴火に伴って、高圧から解放されると、マグマからほとんどのガスが放出される。溶岩はガスが抜けたあとの緻密(ちみつ)な岩石である。
一方、今回のような高い噴煙を形成する爆発的な噴火をすると、ガスが膨張しながらマグマが固まるため、空隙(くうげき)の多いスカスカの岩石(軽石)となる。空隙のため全体の密度は水よりも軽くなり、海面を漂流する。水がしみこんで空隙を満たすと沈降するが、空隙の形が複雑なため、長い期間漂流を続けることになる。
軽石は、乾燥トウモロコシがポップコーンになるように、
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