地球とうり二つから進化したのに、違いすぎるのは何故か――謎を探る本格探査へ
2021年12月11日
なぜ、今、金星なのか?
地球と同じ過程で星が形成したと思われる上にサイズも同じ『兄弟星』なのに、知れば知るほど異なっていることが分かってきたという科学的理由は当然あるが、それ以上に、今まで分厚い雲に隠れて、大気や地上を周回機から測定することが困難だったのが、近年になって観測技術が現実的なレベルに上がったからだ。
雲をすり抜けて雲の下の大気や地表を観測するには、気球や着陸機を飛ばすか、雲を通り抜ける波長で観測しなければならない。前者は旧ソ連がベガ計画(1980年代)で実行しており、その結果、地表が灼熱(しゃくねつ)地獄で観測装置、特に電気回路が長時間耐えられないことが分かっている。気球は大気浮遊物の採取・解析や大気の状態を調べるには不可欠だが、ヘリウムガスが漏出しやすく短期間しか飛べないので地表観測には向いておらず、地球ですら地上観測には使われていない。飛行機や人工衛星の方がはるかに効率的で精度も高いからだ。
そんな時に見つかったのが、雲を通り抜ける光の波長域である。通称「窓」と呼ばれる波長域は、赤外線に数カ所あり、それぞれ到達高度が違う。雲の下層で遮られるものもあれば地表に届くものもある。もっとも、波長域が狭いということは、エネルギー(光量)も少ないことを意味する。受信側の装置がちょっとでも広い波長を拾ったら、近隣波長域を占める雲からの光が本来のシグナルを隠してしまう。そんな暗くて狭いソースだから、高性能のカメラでないと科学的に有意義な観測は困難だ。
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