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“金星の時代”が始まる!

地球とうり二つから進化したのに、違いすぎるのは何故か――謎を探る本格探査へ

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

拡大マゼラン探査機など複数のデータから合成した金星=NASAなど提供
 今年6月に米国と欧州の宇宙機関が続けざまに次期中型ミッション(採択から打ち上げまで8-10年かかる規模)を決めたが、それは太陽系探査の関係者を驚かすものだった。米国航空宇宙局(NASA)は4つの太陽系探査候補から選ぶ2つをいずれも金星探査ミッションとし、欧州宇宙機関も、宇宙物理との選択の末、金星を選んだ。欧米合わせて7つの候補の中に金星探査は3つしかなかったにもかかわらずだ。要するに「月・火星の次」として金星の本格調査が始まるということだ。

 なぜ、今、金星なのか?

 地球と同じ過程で星が形成したと思われる上にサイズも同じ『兄弟星』なのに、知れば知るほど異なっていることが分かってきたという科学的理由は当然あるが、それ以上に、今まで分厚い雲に隠れて、大気や地上を周回機から測定することが困難だったのが、近年になって観測技術が現実的なレベルに上がったからだ。

新しい観測技術の可能性 日本の「あかつき」が証明

 雲をすり抜けて雲の下の大気や地表を観測するには、気球や着陸機を飛ばすか、雲を通り抜ける波長で観測しなければならない。前者は旧ソ連がベガ計画(1980年代)で実行しており、その結果、地表が灼熱(しゃくねつ)地獄で観測装置、特に電気回路が長時間耐えられないことが分かっている。気球は大気浮遊物の採取・解析や大気の状態を調べるには不可欠だが、ヘリウムガスが漏出しやすく短期間しか飛べないので地表観測には向いておらず、地球ですら地上観測には使われていない。飛行機や人工衛星の方がはるかに効率的で精度も高いからだ。

拡大マゼランのデータで作られた金星の濃淡地図:電波の反射の多寡を濃淡で表したもので、組成を大雑把に分類できる。解像度100m=NASAなど提供
 雲を通り抜ける波長としては以前から電波が知られていて、米国が1989年に打ち上げたマゼラン探査機も、これを使って金星の地形図(解像度:平面方向50km、高さ方向100m)と濃淡地図(図)を作った。しかし、それ以来、マゼラン探査機を超えるものを作るには、装置が重くなりすぎてミッションのコストが高すぎるという難点があり、同じ予算を使うなら他の太陽系探査での新発見を目指す方が価値が高いと判断されてきた。

 そんな時に見つかったのが、雲を通り抜ける光の波長域である。通称「窓」と呼ばれる波長域は、赤外線に数カ所あり、それぞれ到達高度が違う。雲の下層で遮られるものもあれば地表に届くものもある。もっとも、波長域が狭いということは、エネルギー(光量)も少ないことを意味する。受信側の装置がちょっとでも広い波長を拾ったら、近隣波長域を占める雲からの光が本来のシグナルを隠してしまう。そんな暗くて狭いソースだから、高性能のカメラでないと科学的に有意義な観測は困難だ。

拡大金星を探査する「あかつき」のイメージ=宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供
 そういう観測が可能であることを証明したのが、他ならぬ日本の「あかつき」である。その意味で「あかつき」は先駆的なミッションだ
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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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