汚染者負担原則をないがしろにする国と県に求められる本格的な汚染調査
2021年12月20日
前回の「日本は本当に主権国家なのか?」では、在沖米海兵隊による8月26日の一方的な有機フッ素化合物(PFAS)汚水排出問題について書いた。今回は、その後の異常な展開について伝える。
前回は、沖縄の人々が恐れていたシナリオについては書かなかったが、事態はまさに恐れていたそのシナリオ通りに展開した。その意味では、ある意味「予想通りの」、しかし「あしき先例となる重大な」展開であった。
経緯を振り返りたい。今回の汚水排出を巡っては、まず7月8日に米海兵隊が宜野湾市の下水道への放出を日本側と調整中であると発表し、岸信夫防衛相が翌9日の記者会見で「処理方法を日米間で協議している」と明らかにした。そして7月13日に国や県が処理方法について基地内で米側から説明を受け、19日には国や県が浄化後の水をサンプリングしたとしていた。
基地内で処理システムの説明を受けた際には、海兵隊は、処理計画が決まるまでは排水しない考えを示していたという。また採取した汚水のサンプルの分析結果を国、県、米軍の三者が同時に公表する予定であった。にもかかわらず海兵隊は、8月26日、分析結果は、PFASのうちペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)の合計で2.7ng/Lであったと独自に報道発表し、その30分後にドラム缶320本分の汚水排出を開始したのである。
沖縄県は、7月19日に国、県、米軍の三者で同時にサンプリングした結果は2.5ng/Lであったと公表しており、米軍発表の数値と矛盾はない。そうすると、8月26日に放出された汚水は、7月19日に三者が採水した汚水とは別物だと考えるのが自然だ。しかし米軍は、つじつまの合わないこの話に一切説明責任を果たしていない。
従来であれば、米軍の環境汚染は隠していたものがあとで発覚するというのが通常であり、汚水をこれから放出すると予告する米軍のやり方は異常だと多くの県民は感じていた。そしてこれは、もしかすると日本政府をゆするための芝居ではないかと勘繰っていた。その予想が、
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