メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

年初に30年後の宇宙事情を夢想する

205X年、宇宙船を月上空で乗り換え火星・金星へ 宇宙ステーションが民営化

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 コロナ禍で息苦しい世相なので、年初にあたり20年後、30年後の宇宙事情を夢想してみようと思う。そういう世界を想像することで、向こう10年以内に国際社会が考えるべき問題も出てこよう。

 あくまでも私個人の夢想なので、太陽系科学関係者一般の見解とは異なることをあらかじめ申し上げておく。

火星・金星で有人探査

拡大火星を探査する宇宙飛行士と基地のイメージ=NASA
 米国が既に手を上げているように、火星への有人ミッションが始まっているだろう。それは21世紀後半の火星基地・22世紀の火星植民への一里塚となるはずだ。火星植民に意義があるかどうかは私にすら分からない。しかし、異なる環境で生活することは、新しい知恵を生み出し、それが新たな発明・発見につながる。そして、そういう知識は、おそらく地球での生活にも有益だ。例えば水のリサイクル、例えば気密室での植物栽培。新しい挑戦を続けるからこそ、人類は停滞せずにすむ。

 植民対象は金星の上空約40-50kmも含む。分子量44の二酸化炭素が中心の大気だから、分子量28の窒素や分量32の酸素だけで飛行船を作ったら、十分大きければ浮かぶはずだ。ガリバー旅行記にでてくる浮島「ラピュタ」のように。今の日本人にはスタジオジブリのアニメ「天空の城ラピュタ」のほうがしっくりくるかもしれない。ただし金星ラピュタに「飛行石」は要らないが。

月面基地を建設

拡大月面で活動するアポロ15号の宇宙飛行士=NASA
 現在、中国と米国が着々と月面基地計画をすすめているが、20~30年後にはとうに完成して稼働しているはずだ。その頃には、現在一部で懸念されている資源問題も、恐らくは棲(す)み分けという形で解決しているだろう。私が楽観している理由は、月資源を地球に持ち帰るようなビジネスは採算が取れないからだ(これについては、以前『月の商業利用の可能性を考える』で述べた)。使う資源が現地基地の維持と、火星・金星ミッションの基地としての役割だけなら、それほど多くのリソースは必要としない。今騒いでいる人たちは、採算問題を全く考えていないのだ。

 政治家の中には「早い者勝ちの占有権」を主張することで外交カードにしようとする者も現れようが、それなら「持ち帰るならどうぞ」ぐらいの対応が賢い。騒げば騒ぐほど、悪意の政治家の思うつぼなのである。

 おそらく基地建設当初は、国家間の対抗意識が表に出て基地が別々に造られるだろう。しかし、最終的には、何か事故があったときにバックアップとして、あるいは不足物資を融通し合う間柄として、平和的に補完的に機能するのではあるまいか。どんなに地上では複雑な国際関係にあろうと、いったん宇宙に来てしまったら、宇宙飛行や月面でのサバイバルには関係ない話だからだ。月からみる地球はちっぽけで、国境なんか無い。本国で意見の異なる者どうしだって、同国人の少ない外国では仲良く助け合う。それと同じだ。

月の上空に宇宙ステーション 地球や他の惑星と結ぶ中継基地に

拡大国際宇宙ステーション(ISS)。米航空宇宙局(NASA)は、2024年までの運用期間を30年まで延長する方針を昨年末明らかにした=JAXA/NASA

 国際宇宙ステーション(ISS)の後継として最有力なのは、月面ではなく月上空の宇宙ステーションだ。というのも、そこは月だけでなく、太陽系の他の惑星に向かう中継拠点としても同時に役立つからだ。例えば、いざという時に月面から取りあえず脱出する先として機能する。地球での発射条件と月の特定の場所での着陸条件、あるいはその逆を同時に満たそうとすると、それが可能な時間帯は非常に限られている。しかし月上空だと24時間アクセス出来る。

 月上空に基地を置くべきもう一つの理由は

・・・ログインして読む
(残り:約2008文字/本文:約3438文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

山内正敏の記事

もっと見る