化石燃料会社や電力会社の広告は、ニューヨーク市の基準だとアウト
2022年01月18日
2021年4月22日、石油大手3社(エクソンモービル、BP、シェル)と米石油協会が、広告などを通して消費者をだますグリーンウォッシュを行ったとしてニューヨーク州上級裁判所に提訴された。訴状には具体的な罰金額なども書いてある。提訴したのは、市民団体やNGOではなく、ニューヨーク市だ。当時のデブラシオ市長は「石油会社はウソの広告を流して州の消費者保護法を明らかに違反した。裁判所で会おう」(ニューヨーク州HP)とコメントしている。
グリーンウォッシュとは、表面上を取り繕うことを意味する「ホワイトウォッシュ」と「グリーン」を掛け合わせた造語で、あたかも環境に良さそう、エコであると見せかけ、意図的に消費者の誤解を招くことを示す。
米ニューヨーク市の訴状では、50以上の具体例をひいて、下記のような広告をグリーンウォッシュとしている。
①売り上げ・収益・投資額の大部分が化石燃料関連であり、それが実際には継続・拡大する傾向あるいは計画があるのに、それに対しては沈黙しつつ、実際にはビジネス全体から見れば小さな部分でしかない再生可能エネルギー(以下、再エネ)、革新的技術(水素、バイオ燃料など)、CCS(炭素回収・貯留)、電気自動車などへの投資あるいは投資計画を過大に強調する。そのことで、自社が「グリーン」あるいは「クリーン」であるという虚偽のイメージを消費者に与える。
②水素、天然ガス、バイオ燃料などの燃焼時の二酸化炭素(CO₂)排出量が小さいことを主張し、生産時の二酸化炭素やメタンなどの発生は無視する。技術的な難しさや経済合理性についても言及しない。
③再エネのバックアップ電源として化石燃料が必要と主張をする(実際には、すべての電源にはバックアップが必要であり、再エネのバックアップとしては、電力融通、蓄電、需要側管理、揚水発電など様々な対応方法や技術がある)。
④「世界が2050年ネットゼロを目指すのを支持する」と言いながら、自社の実際のビジネス計画は「2050年ネットゼロ」に全く整合していない。
このようなグリーンウォッシュ広告は米国に限らない。欧州でも、「化石燃料会社がTwitter、Facebookに投稿した3,000件以上のオンライン投稿や動画のうち、63%が(多くが実態とはかけ離れているのに)自らをグリーンと紹介していた」という調査結果がある。
このニューヨーク市の基準で考えると、日本の化石燃料会社や電力会社の広告は、ほぼすべてがグリーンウォッシュとなる。また、多くの企業や自治体が「2050年ネットゼロ」を宣言しているが、2030年までも含めた具体的なロードマップがなかったり、商用化が見通せない「革新的技術」などに頼ったりする場合、それも多くがグリーンウォッシュとみなされる。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください