バイオベンチャーのうそがなぜすぐバレなかったのか
2022年02月08日
シリコンバレーの「元」先端企業、セラノスの創始者で元CEOのエリザベス・ホームズ被告(37)に、有罪評決が出た(1月3日、NYT他)。このセラノスは革新技術による血液検査を掲げた会社だが、投資家や患者に対する詐欺罪に問われていた。
「世紀の科学詐欺」というべきこの事件、本欄『ブラックボックス化する現代社会』でも言及したことがある。科学技術が進み、世の中の仕組みが複雑化すればするほど、その中身はブラックボックス化する、そういう事例として取り上げた。今回は事件のてんまつを振り返って、素朴な疑問に答えつつ、現代技術社会に示唆するところを示したい。
ホームズ被告がスタンフォード大学を中退して2003年に創業したこの会社、連邦政府の元閣僚や芸能人、大企業などがこぞって投資するなど、熱烈な支持を集めて大ブレークした。バイオベンチャーのエースとして、ほぼ10年で約3億5千万ドル(約380億円)を調達、時価総額は約90億ドル(約1兆円)に達した。その株式の過半を所有するホームズは「自力でビリオネアになった最年少の女性」とされ、「次のスティーブ・ジョブス」とまで称された(BBCニュース、1月4日)。しかし2015年、セラノスの血液検査機器が機能しないことが発覚し、突然破綻した。
カリフォルニア州サンノゼでの裁判で、検察側は被告が技術についての嘘(うそ)を知りながら、投資家に詐欺を働いていたと主張。陪審員らは11件の罪状のうち、投資家に対する詐欺罪と通信詐欺罪3件の計4件について有罪と判断。一方、公共に対する詐取など4件については無罪とした。残りの3件については陪審団が合意に至っていないという。
弁護側はホームズ被告を、男性優位の業界で必死になって働いた女性実業家と位置づけた。またずっと年長の元ボーイフレンドで、セラノス元社長でもあったラメシュ・サニー・バルワニ被告から、虐待を受けていた、生活のすべてをコントロールされており、
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください