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世紀の科学詐欺? セラノス事件の意味するもの

バイオベンチャーのうそがなぜすぐバレなかったのか

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

 シリコンバレーの「元」先端企業、セラノスの創始者で元CEOのエリザベス・ホームズ被告(37)に、有罪評決が出た(1月3日、NYT他)。このセラノスは革新技術による血液検査を掲げた会社だが、投資家や患者に対する詐欺罪に問われていた。

 「世紀の科学詐欺」というべきこの事件、本欄『ブラックボックス化する現代社会』でも言及したことがある。科学技術が進み、世の中の仕組みが複雑化すればするほど、その中身はブラックボックス化する、そういう事例として取り上げた。今回は事件のてんまつを振り返って、素朴な疑問に答えつつ、現代技術社会に示唆するところを示したい。

次のスティーブ・ジョブスとまで称された

 ホームズ被告がスタンフォード大学を中退して2003年に創業したこの会社、連邦政府の元閣僚や芸能人、大企業などがこぞって投資するなど、熱烈な支持を集めて大ブレークした。バイオベンチャーのエースとして、ほぼ10年で約3億5千万ドル(約380億円)を調達、時価総額は約90億ドル(約1兆円)に達した。その株式の過半を所有するホームズは「自力でビリオネアになった最年少の女性」とされ、「次のスティーブ・ジョブス」とまで称された(BBCニュース、1月4日)。しかし2015年、セラノスの血液検査機器が機能しないことが発覚し、突然破綻した。

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 カリフォルニア州サンノゼでの裁判で、検察側は被告が技術についての嘘(うそ)を知りながら、投資家に詐欺を働いていたと主張。陪審員らは11件の罪状のうち、投資家に対する詐欺罪と通信詐欺罪3件の計4件について有罪と判断。一方、公共に対する詐取など4件については無罪とした。残りの3件については陪審団が合意に至っていないという。

 弁護側はホームズ被告を、男性優位の業界で必死になって働いた女性実業家と位置づけた。またずっと年長の元ボーイフレンドで、セラノス元社長でもあったラメシュ・サニー・バルワニ被告から、虐待を受けていた、生活のすべてをコントロールされており、

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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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