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トンガの火山噴火が示した「地球科学は“未体験”現象の宝庫」

近代観測が始まってからの100年なんて、地球の歴史からしたらほんの一瞬

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

拡大気象衛星「ひまわり8号」が撮影した海底火山の噴煙=2022年1月15日午後2時、情報通信研究機構(NICT)提供
 トンガの火山の大噴火は、トンガ王国への大被害など、社会的に大きなインパクトを与え、現在でもその復旧に各国が協力しているほどだ。同時に、地球科学現象という意味でも大きなインパクトを残した。本稿では後者について語りたい。

 噴火は、そのエネルギーが現代的な観測史上最大級で、匹敵するのは約30年前のフィリピン・ピナトゥボ火山爆発までさかのぼる。大気へのエネルギー放出量に限ればピナトゥボ火山より上という報告もある。人工衛星から撮った噴煙の画像は動画として各メディアをにぎわせたが、これも観測史上最大級の広がりだったそうだ。

気圧パルスと“普通でない津波(?)” 多くの人が注目

 これほどの規模だったことを反映して、過去の観測に無いような地球規模の「新(?)現象」をもたらした。1つは太平洋岸諸国で話題になった「普通でない津波?」であり、もう1つは地球の反対側までくっきりと広がった「気圧のパルス」だ。これらは欧米でも即座に話題になった。

 いずれの現象も局所的な発生は普通に起こり得るし、類似の大規模現象は近代観測以前(1883年、インドネシアのクラカタウ噴火)にあったらしい。専門家の話では、クラカタウ噴火を解析した理論が今回もおおむね応用出来るそうだ。なので厳密には「メカニズムは既に知られているのに一般に認知してもらえていない現象」だろう。

 しかし、地球規模となると、1883年の昔に1度起こったきりで、ピナトゥボ火山の噴火や1980年の米国セントヘレンズ火山の噴火では、地域レベルの「気圧パルス」しか報告されていない。今回の「気圧パルス」のエネルギーの供給が尋常でなかったのは間違いなく、そこに未知のメカニズムが絡んでいる可能性がある。

 津波に至っては、クラカタウ噴火とは別のメカニズムで起こった可能性すら否定出来ない。その意味では多くの人間にとって「新?」現象だろう。たといクラカタウ噴火の時にメカニズムが主因だとしても、現代観測で今まで検知出来なかった現象が初めて、しかも誰にでも認識出来るよう形で検知されたのだ。話題になるのも当然だ。

 例えば世界気象機関のツイッターで紹介された「Severe Weather Europe」には、欧州各地の気圧パルスのデータが同じ週末に集まっていた。私の勤めるスウェーデン国立スペース物理研究所でも北極経由の第1波と南極経由の第2波が気圧パルスとして検知され、所員の間で話題になった。

拡大
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 衛星のデータも、米国の静止衛星GOESで検知された「気圧パルス」の伝播(でんぱ)の様子が、噴火2週間足らずで米国地球物理学会の科学週報に、動画として紹介されたりしている。

拡大噴火翌日、ニュージーランド上空を通りかかった国際宇宙ステーションから見えたトンガの噴火の噴煙=NASA飛行士のケイラ・バロンさん撮影(NASA提供)
 週報では、影響がニュージーランドの上空100kmの電離層にすら及び、それが長時間続いている様子も動画として紹介されている。ただしこちらは2011年の東日本大震災の際や、2013年のロシアのチェリャビンスク隕石(いんせき)落下の際にも類似の現象が観測されているので、そこまでの驚きはないが。

 要するに「津波?」と「気圧パルス」は

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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