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大学教員と採用の選考プロセスはどうあるべきか? アメリカを例に考える

大学院生の意見を反映 選考委員を担う大学も

桜井良 立命館大学政策科学部准教授

フロリダ大学の筆者が所属していた研究科の建物。今年、およそ10年ぶりに母校を訪れたが、新たな建物が次々と建てられており、その発展ぶりに驚いた。
 海外の大学に留学すると、日本ではできないような経験をすることがある。筆者にとってそれは、10年前、アメリカ・フロリダ大学留学時に1大学院生でありながら、新しく採用される教員の選考に携わることができたことだ。

 教員を採用する際に、大学院生も選考に関与するのはアメリカの大学では一般的なようだが、日本の大学ではあまり聞いたことがない。筆者が現在、客員教員として在籍しているコーネル大学での大学教員選考プロセスも踏まえ、あるべき大学教員の姿を考えてみた。

日本と異なるプロセス

 大学によって多少の違いはあるだろうが、一般的に日本では公募された教員のポストに応募があり、採用する大学の学部・研究科の、特に選考委員の教員(主に教授や准教授など)を中心に書類審査をすることが多い。審査の結果、通常数人の候補者を選び、次に実際にキャンパスに来てもらい、模擬授業や面接を行い、その結果をもとに、選考委員、さらに学部・研究科の教授会などで審議し、最終的な採用者を決定する。

 模擬授業や面接に参加できるのは、基本的には一部の関係者、具体的には選考委員や教授会を構成する教員だけだ。そうでない事例もあるが、筆者が日本で経験してきた大学教員選考プロセスや他の大学関係者との話を踏まえると、日本ではこの方式が多いようだ。

 一方で、アメリカの選考プロセスは、フロリダ大学やコーネル大学、さらにその他の大学の話を聞く限り、書類審査から数人の候補者を選び大学に来てもらうところまでは一緒だが、その先が日本とは異なる。

=shutterstock.com
 私が留学していた約10年前、フロリダ大学では研究や教育、そして大学運営に携わる大学教員(日本でいう助教、准教授、または教授)を採用することになった。多くの応募者の中から3人の候補者を選び、研究科に所属する大学院生も大学の教員と一緒に候補者を審査することになっていた。

 筆者も他の大学院生とともに、候補者の模擬授業や研究発表を聞き、個別に各候補者とディスカッションをして、研究科に対し大学が採用すべき教員について大学院生代表を通して意見を述べた。「この人の授業を受けたい」。そう思って推薦した候補者が実際に教員として採用されたと知ったときは、大学院生でありながら新たな教員の採用に貢献できたという達成感を得た。

 このように、アメリカでは教員採用の模擬授業や研究発表などに大学院生も参加するし、候補者に質問もできる。それとは別に、大学院生が候補者と会って、自由に議論する時間も設定されている。フロリダ大学では、候補者と昼食をともにしながらどんな研究をしているのか、採用されたらどんな教員になりたいかなど、いろいろな質問を大学院生がしていた。

 現在まさに新たな教員の選考が行われているコーネル大学でも、大学院生1人ひとりが各候補者に会って自由に話すことができる時間が設けられ、実際に多くの大学院生が会いに行っていた。大学院生は、執行部に対し、研究発表、模擬授業、個別面談を踏まえて得た候補者についての意見や印象を自由に伝えることができる。

コーネル大の学部長に直撃 「大学院生の関与こそ重要」

 さて、ここで気になるのは、大学院生からのフィードバックが実際にどの程度、最終的な意思決定に考慮されるのか、ということだ。

現在新たな教員の選考をしているコーネル大学 自然資源・環境学部の建物。新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえ、室内ではなく建物の外で授業をしているクラスもあった。
 新しい教員の選考中のコーネル大学 自然資源・環境学部において、採用の最終決定者の1人である同学部長に直接話を聞いてみた。まず、教員採用において大学院生からのフィードバックを実際にどのくらい考慮しているのか尋ねた。

 「確実に一定の影響を大学院生が与えることができる」

 それが答えだった。選考委員は計5人で構成され、「1人が大学院生代表の学生である」とも教えてくれた。「大学院生の票」は、各大学院生からの意見やフィードバックをもとに、大学院生代表が投票する。

 最終的な採用者は大学全体のトップも含めて決定するが

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