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続・実践・日本でも配電網を地域で持てるようにしよう!

金山デッキは、余った再エネの電気を地域で融通する実験場だ

小林光 東京大学教養学部客員教授(環境経済政策)

エネルギー供給住宅「金山デッキ」(手前の平屋建て)を北側から望む拡大エネルギー供給住宅「金山デッキ」(手前の平屋建て)を北側から望む
 長野県茅野市に2021年暮れに出来上がったエネルギー供給住宅(ポジティブ・エネルギー・ハウス)「金山デッキ」について、環境技術に詳しくない方々にも理解していただけるよう、かみ砕いて説明したい。まずは省エネと創(自給)エネの二つのステップに分けて説明しょう。

高い断熱性能で、どこにも寒い所がない

 省エネ:家の中で使われるエネルギーの相当な部分は空調によるもの。金山デッキは内陸の、標高が1020mの土地、周りに影を差すような遮蔽(しゃへい)物のない、大景観の場所に建っている。

 このため、放射冷却が激しく、冬季の平均最低気温がマイナス8℃と寒いのが特徴で、暖房エネルギーの節約が鍵となる。ちなみに、夏季の平均最高気温は28℃、日間平均気温は21℃程度、平均最低気温は17℃と、夏は過ごしやすい気候だ(数値は、近隣で標高がほぼ同じ原村の測候所の値)。

 そこで、金山デッキでは、設計の中村勉先生に断熱を徹底するようにお願いした。この断熱性の優劣の指標には、住宅の表面面積1㎡当たりに単位時間で逃げていく熱の量(W)がある。UA値と言い、小さい方が断熱性が高い。建築物省エネ法で要請される値は、0.56だが、金山デッキでは0.32と、熱の逃げ方が4割以上少ない高断熱になった。

高い断熱性能で、室内はどこにも寒い所がない。快適で健康にいい家ができた。拡大高い断熱性能で、室内はどこにも寒い所がない。快適で健康にいい家ができた。
 設備についても、エアコンや冷蔵庫、洗濯機など、省エネ基準(トップランナー基準)があるものは最も省エネなものを選んだ。こうしたことから、通常の家で必要になるエネルギーの量に比べて、金山デッキは37%少ない量で暮らせるようになった。単に省エネであるだけでなく、断熱のおかげで、家のどこでも寒い所がない、という、高い快適性や健康的な室内も同時に実現できた。

 創エネ:金山デッキでも少ないとはいえ、どうしてもエネルギーを使わざるを得ない。このエネルギーには、炭素を出さないエネルギーをフルに充てる。このため、屋根には8.8kW能力の太陽光発電パネルを置いた。

 当地は雨の少ない内陸なので、東京などより15%も日射量が多く、さらに大景観の、したがって発電適地になる場所を選んでこの家を建てたため、年間1万kWh近く発電する計算だ。これは、この家で必要な電力量の倍以上になるであろう。けれども、太陽光発電は、夜はできず、雨や雪の日でも期待できない。

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筆者

小林光

小林光(こばやし・ひかる) 東京大学教養学部客員教授(環境経済政策)

東京大学教養学部客員教授(環境経済政策)。工学博士。1949年生まれ、慶応義塾大学経済学部卒業。環境庁(省)では、環境と経済、地球温暖化などの課題を幅広く担当。1997年の京都会議(COP3)の日本誘致のほか、温暖化の国際交渉、環境税の創設などを進めた。環境事務次官(2009~11年)時代には水俣病患者団体との和解に力を注ぐ。自然エネルギーをふんだんに利用したエコハウスを自宅にしていることで有名。趣味は蝶の観察。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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