金山デッキは、余った再エネの電気を地域で融通する実験場だ
2022年02月25日
省エネ:家の中で使われるエネルギーの相当な部分は空調によるもの。金山デッキは内陸の、標高が1020mの土地、周りに影を差すような遮蔽(しゃへい)物のない、大景観の場所に建っている。
このため、放射冷却が激しく、冬季の平均最低気温がマイナス8℃と寒いのが特徴で、暖房エネルギーの節約が鍵となる。ちなみに、夏季の平均最高気温は28℃、日間平均気温は21℃程度、平均最低気温は17℃と、夏は過ごしやすい気候だ(数値は、近隣で標高がほぼ同じ原村の測候所の値)。
そこで、金山デッキでは、設計の中村勉先生に断熱を徹底するようにお願いした。この断熱性の優劣の指標には、住宅の表面面積1㎡当たりに単位時間で逃げていく熱の量(W)がある。UA値と言い、小さい方が断熱性が高い。建築物省エネ法で要請される値は、0.56だが、金山デッキでは0.32と、熱の逃げ方が4割以上少ない高断熱になった。
創エネ:金山デッキでも少ないとはいえ、どうしてもエネルギーを使わざるを得ない。このエネルギーには、炭素を出さないエネルギーをフルに充てる。このため、屋根には8.8kW能力の太陽光発電パネルを置いた。
当地は雨の少ない内陸なので、東京などより15%も日射量が多く、さらに大景観の、したがって発電適地になる場所を選んでこの家を建てたため、年間1万kWh近く発電する計算だ。これは、この家で必要な電力量の倍以上になるであろう。けれども、太陽光発電は、夜はできず、雨や雪の日でも期待できない。
省エネして残った、少ないけれどどうしても必要なエネルギーを、再生可能エネルギーで賄う、という二段構えの取り組みが脱炭素の最善手である。さらに、この蓄電設備のおかげで、ここでは、台風や大地震で停電した場合、天気が発電に向かなくても、数日間は平穏に生活が営める、という高い安全性も実現できた。
ZEH(ゼッチ):住宅における脱炭素の具体化は、以上のような取り組みで十分に果たせる。金山デッキは、エネルギーを必要量比51%余分に産みだす家、CO₂の観点ではZEH(Zero Emission House)としての認定を受けた。
暮らしで使うエネルギーの量は、実は、住宅敷地に降り注いでくる太陽エネルギーの総量よりはるかに少ない。設備さえあれば、私たちは、自然の恵みだけを頼りにして暮らしを営める。金山デッキでは、まずもってその点を実証したい。
LC(ライフサイクル)CO₂マイナス:金山デッキは、さらにもっと大きな視点で脱炭素を果たしたいと考えて構想された。それは、
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