川口浩(かわぐち・ひろし) 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長
1985年、東京大学医学部卒。医学博士。米コネチカット大学内分泌科博士研究員、東京大学医学部整形外科教室助手・講師・准教授、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター長などを経て、2018年より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医。国際関節病学会理事、日本軟骨代謝学会理事。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
医師会と「連合」は政党色を排除して連携すべき
日本の全医師約32万8000人の中で、開業医を含む「医療施設の開設者または法人の代表者」数は約7万8000人である。残りの約25万人、すなわち全国の医師の75%余りは病院などの医療施設の被雇用勤務医である。
医師という職業はその専門性・特殊性から「労働者ではない」といった誤解が今でも根強く残っているようであるが、被雇用勤務医は医療施設内では間違いなく労働者である。事実、2018年に公布された「働き方改革関連法」に関連した「医師の働き方改革」においては、勤務医に労働基準法が適用されることを前提とした議論がなされている。
しかしながら、問題はその内容である。昨年11月に厚生労働省は地域医療に携わる医師や研修医の残業時間の上限を年1860時間(月155時間相当)とする省令案を了承した。すなわち政府は、医師が労災認定される「過労死ライン」(月80時間)の2倍近くの残業をすることを認めたのである。「医療現場は医師の長時間労働によって成り立っている面が強く、厳しい規制を当てはめれば医療が立ちゆかなくなる」という理由には、医師の労働環境に対する配慮が見られない。「過労死するかも知れないけど、国民や患者の健康のために滅私奉公すべき」という発想はパワハラの域を超えている。
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