ウクライナの緊張から見える人類のどうしようもない愚かさ
2022年02月22日
何度も書いていますが、フランスの雑誌では、30年間一度も漫画をボツにされたことがありません。日本に帰ってきて、AERAの専属漫画家となりましたが、『この漫画はAERAの品格に合わない』、つまり下品だと言われ、ボツにされた時には本当にビックリしました。
フランスの漫画家には、革命時、創刊されたばかりの新聞で、激しく露骨に王・貴族・僧侶を批判し、大衆を味方につけ、革命を成功に導いたという歴史的実績と自負があります。新聞、出版社側も真っ当な批判であれば、激しい表現の漫画でも寛容に受け止めて掲載し、読者を楽しませてきました。
フランスの新聞はキオスク売りが主流で、その日の漫画の出来が新聞の売り上げを左右します。これは80年代の米国とソビエト連邦の冷戦での馬鹿馬鹿しい核武装競争を風刺した漫画です。二人は当時の米ソのトップで、右はレーガン米大統領、左はソ連ゴルバチョフ書記長です。
冷戦時代、米ソは全人類を数十回絶滅できるだけの量の核兵器を保有していました。つまり実際には使えない、使ってはいけない兵器なのです。核兵器の存在を肯定する唯一の言い訳はその恐怖が戦争抑止力になるということです。核兵器が戦争抑止力になるには、その性能、数量を敵に知らしめ、怖がらせなければいけません。マッチョな戦いなのです。
『敵に核兵器で先制攻撃されても、生き残った核兵器で報復し、確実に壊滅的な打撃を与えることができるんだぞ!』というMAD(Mutual Assured Destruction/相互確証破壊)な核戦略で、より高性能な大陸間弾道核ミサイル開発競争を行い、誇示、見せびらかしていたのです。
このMADな核武装競争の経済的負担が、ソ連崩壊の一因だと言われています。国民を窮乏させても無駄な核武装競争をし続けるマッチョ思考の為政者の方が、よっぽど『下品』だと思うのですが……。
この状況は今でも変わっていません。NPT(核不拡散条約)が認める核保有5カ国でも、核軍縮は進まず、むしろ核弾頭の数を増やし、非加盟国の北朝鮮なども加わって、極超音速ミサイルの開発競争などの高性能化で、状況はますます悪化しています。
更なるブラックジョークは、唯一の被爆国、日本が国連に提出していた決議案と同じ趣旨であるはずの『核兵器禁止条約』が国連で採決されたのに、日本国が批准しようとしないことです。
『立ち上がれエイプラハムよ!(この初めて神の声を聞いた類人猿の名前はApraham/エイプラハムというのです)立ち上がって両腕を自由にするのじゃ。その自由になった両腕で文明を築くのじゃ!』
エイプラハムは考えました。『立ち上がれば、僕のForfoot(前脚)はArm(腕/武器)になる。そしてArmはエスカレートして広島、長崎につながるんだ!』
頭が良いエイプラハムは
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