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ウクライナ侵攻を見て日本が考えるべきこと

元原子力安全委員長の鈴木篤之氏に聞く

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

拡大鈴木篤之氏=『ENERGY for the FUTURE』誌提供
 原子力安全委員会(2012年9月に原子力規制委員会が発足すると同時に廃止)の元委員長である鈴木篤之さんに『ENERGY for the FUTURE』誌の依頼を受けてインタビューした。季刊である同誌で4回連載するという企画で、3回目の記事のためのインタビューは4月初め、ロシアのウクライナ侵攻の深刻な状況が日々報道されている中でとなった。おのずと話題はウクライナ危機をめぐるものとなり、鈴木さんは「日本も原子力潜水艦を持つことを考えるべきだ」と主張、一方で核共有や核武装の考えは退けた。同誌編集部および鈴木さんの了承を得て、インタビューのエッセンスを紹介したい。

「核共有」の発想は単純すぎる

 鈴木さんは東京大学工学部教授から2001年に原子力安全委員会委員となり、2006年から2010年まで委員長を務めた。委員長時代に原発の耐震指針を改定。リスク論の考え方を一部取り入れ、津波対策の必要性も書き込んだ。東京電力福島第一原発事故が起きたときは、日本原子力研究開発機構理事長で、当時は、公的立場として応じる取材以外はマスコミの取材をいっさい受けなかった。今回の一連のインタビューは、事故から10年たって初めて思いを公に語る場となった。第1回「福島第一原子力発電所事故の原因とその後」、第2回「原子力の安全行政と日本社会」の掲載誌はすでに刊行されている(問い合わせ先は記事末尾に記載)。

拡大=shutterstock.com
 第3回のインタビューで、鈴木さんはまず「ウクライナ危機が問題提起しているのはエネルギー安全保障問題だ」と位置付けた。「もともとロシアの石油とガスがヨーロッパに供給されて、それがヨーロッパの生命線になっている。原子力をほとんどやめているドイツを中心として、欧州がロシアに依存してしまっているために、ロシアは暴挙に出られたのではないか」

 では日本はどうすればいいのか

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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)、編集委員を経て科学コーディネーターに。2021年9月に退社。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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