登録施設になるメリット少ないまま 観光・まちづくりの役割加わる
2022年05月10日
令和4(2022)年4月15日に博物館法の一部を改正する法律が公布された。来年4月に施行される。この法律は制定からすでに70 年が経過しており、この間に当初は全国で200館余りにすぎなかった博物館も5千館を超えるまでになっている。さらに時代の変遷と共に博物館に求められる役割も大きく変化したことから、現状に合わせる形で今回の法改正が行われることになったものだ。
自然史に関わる博物館機能を持つ組織では、この法律が適用される館の方がはるかに少ないのが現状である。これは博物館法の対象となる博物館の設置者が地方公共団体、一般社団・財団法人等に限定されており、国や独法、大学、株式会社等が設立した博物館は登録の対象となっていなかったことに原因がある。今回の法改正ではこの部分が大きく変わることになった。
なお、国立科学博物館(以下「科博」)は従前より登録博物館ではなく、また今回の法改正でも対象から外れて、今後も「博物館相当施設」として扱われることになった。したがって、直接の影響はそれほどないのだが、当然ながら今回の法改正は日本の博物館の運営に大きな影響を与えることは間違いない。そこで、本稿では科学系の博物館の立場から今回の法改正について論じてみたい。
博物館は、資料を収集・保管して、それを調査研究し、展示、あるいは教育を行っていくという点では共通しており、それが活動の中心となっている。ところが標本の収集・保管を要件とすると、教育系の科学館の中には博物館という概念から外れてしまうものもある。一般的にプラネタリウムなどでは標本などを持つことは考えにくい。そこで現状では、標本については有形・無形のものを含むという概念の拡張を行って包括的に捉えている。しかし当初想定した博物館の概念を超えて、数多くの博物館が設置されてきたために、それにも収まらない博物館が存在する。
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