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住宅の脱炭素化への国の支援策は間違いだらけ

高額でハードルが高い補助金申請手続き、田舎は対象外、半年待たされ……

小林光 東京大学教養学部客員教授(環境経済政策)

 論者は、仕事柄、環境対策を自ら実験的な観点で実践するよう心掛けている。

金山デッキでは植栽工事が始まっている=2022年5月金山デッキでは植栽工事が始まっている=2022年5月
 具体的には、2000年には自宅エコハウスを建築し、建て替え前比で75%程度のCO₂削減を果たした。2014年にはエコ賃貸を開業した。7.2kW能力の太陽光発電パネルを7kWh能力の蓄電池や井戸と組み合わせて災害時の自立能力を実装した。

 そして、つい最近、昨21年12月には、長野県茅野市の八ケ岳のふもとに、真のZEH(ゼッチ、Zero Emission House)、より正確には8.8kWの発電能力と23kWhの蓄電池を擁する、ポジティブ・エネルギー・ハウス(エネルギー生産住宅)と言うべき脱炭素時代の住宅「金山デッキ」を建てた。(2022年2月24日「実践・日本でも配電網を地域で持てるようにしよう!」で紹介)

 この三つの実験で、現時点でも借入金がなお3000万円近く残っていて、高い勉強代・研究費になっているが、狙い通り貴重な経験を得ることはできている。

 実践してみて初めて分かる得難い教訓・学びについては、近著「エコなお家が横につながる」(海象社ブックレット、2021年6月刊)に詳しく掲載させていただいたのでそこに譲るとして、本稿では、住宅のエコ化に対する支援策の不十分さと要改善点なり改善の方向を指摘することとしたい。

 なお、支援策の是非を議論することの前提として、住宅脱炭素化のための追加負担額のオーダーを知っておくべきであろう。プライベートな話だが、三つ目の例の金山デッキについてあえて公開すると、補助金などを除いた実負担額は630万円であった。支援がなければ普通は負担しにくいオーダーであることは間違いない。

 金山ハウスの実負担額は表の通りだ。

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