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日本における温暖化問題の「耐えられない軽さ」

「ネットゼロ」に対する誤解と無知が、それを表している

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 ミラン・クンデラの小説に、冷戦下の旧チェコスロバキアのプラハの春を題材にした『存在の耐えられない軽さ』がある。そこでは、主人公の恋人が、「私にとって人生は重いものなのに、あなたにとっては軽い。私はその軽さに耐えられない」という言葉を残して主人公のもとを去っていく。

ブラジル・アマゾナス州の森林火災で消火活動にあたる消防隊員=2020年8月、ロイターブラジル・アマゾナス州の森林火災で消火活動にあたる消防隊員=2020年8月、ロイター
 日本で温暖化問題に深く関わる人にとって、日本の国民や政府の気候危機に対する認識は、まさに耐えられないくらい軽い。ドイツ、イギリス、北欧、そして今の米国くらいに、温暖化問題が国民の関心事であればよいのに、と思っているのは、筆者だけではないのではないか。

 もちろん、状況がそう簡単には変わることはなく、例えば、多くの先進国が石炭火力発電(以下、石炭火力)の廃止を進める中、石炭産出国でないのに石炭火力に固執する日本は、多くの研究者の目には異様に映っている。

「後進国」として評価が定着

 欧州のシンクタンクであるGerman Watchは、2021年11月に開催された英グラスゴーでの国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)期間中に、約60の主要排出国の気候変動政策の評価ランキング「気候変動パフォーマンスインデックス(CCPI)2022」を発表した。CCPIは、2009年から15の指標を用いて分析したランキングだ。表1は日本の順位の変遷を示している。

出典:German Watch, Climate Change Performance Index
出典:German Watch, Climate Change Performance Index

 これを見ると、日本は常に下から数えた方がはるかに早い。2007年は下から2番目だった(この時の最下位はサウジアラビア)。「日本は、2011年の東日本大震災および東京電力福島第一原発事故後に、石炭火力を増やさざるを得なかった。そのために評価を落とした」と考えている人がいるが、それは間違いだ。表1が示すように、日本は昔も今も温暖化対策後進国というのが世界の評価である。

図1 石炭火力転換ランキング
出典:Littlecott Chris and Roberts Leo (2021) “The rise and fall of coal: 2020 transition trends”
図1 石炭火力転換ランキング 出典:Littlecott Chris and Roberts Leo (2021) “The rise and fall of coal: 2020 transition trends”
 図1は、別の欧州のシンクタンクE3GによるOECD加盟国とEU28カ国の計41カ国の脱石炭火力のランキングである。用いている指標は、「具体的な石炭火力フェーズアウト表明の有無」「現状および将来の石炭火力の稼働状況」などであり、これによると日本は堂々の最下位となっている。

脱石炭火力は先進国で最下位

 5月下旬に予定される主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合に向け、議長国のドイツが各国に示した共同声明の原案では、温暖化対策として、2030年までに各国内の石炭火力発電を廃止する方針などが盛り込まれている。これに対しても、日本政府は強く反発している(朝日新聞2022年4月26日)。

 日本国内では、今、

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