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ゾンビ化する温暖化を疑う人々。その科学的、経済学的なおかしさ

温暖化懐疑論および対策不要論に改めて反論する1

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

池田信夫氏の公開質問状

 懐疑論と対策不要論の両方に関わっている人に経済評論家の池田信夫氏がいる。実は、現在、池田信夫氏のブログ広告が、Youtube社(親会社はGoogle社)の「「気候変動に関連して信頼できる科学的なコンセンサスと矛盾するコンテンツとなっている広告は禁止」という方針に抵触して広告禁止になっている。それに対して、池田氏は2022年1月19日、Google日本法人社長宛てに公開質問状を出した(この中では上記の杉山氏の議論も援用している)。

 もちろん、言論の自由は大事だ。少数意見がメディアに取り上げられて、いわゆる両論併記(both-sidism)されるのも、時と場合によっては重要だ。しかし、例えば、ある企業が「喫煙は身体に良い」という広告を出したら、その企業や広告を流したメディアは許されるだろうか。すなわち、イシューごとに検討する必要があり、両論併記されうるか否かは、メディアを含めた社会全体が持つ科学的知見の質と量に大きくよる。

 私は13年前、国立環境研究所や海洋研究開発機構の研究者とともに、懐疑論に対する包括的な反論を書いた。その内容に大きく変えるべき点はないし、いまもほぼ通用する。明日香寿川・吉村純・増田耕一・河宮未知生・江守正多・野沢徹・高橋潔・伊勢武史・川村賢二・山本政一郎『地球温暖化懐疑論批判』(2009)

 本稿では、改めて5回に分けて、池田信夫氏のGoogle支社長宛ての公開質問状への回答を中心にして、懐疑論や対策不要論の問題点を明らかにする。「国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新報告書などの気候変動の科学と経済に関する最新の知見も紹介しながら、なるべくわかりやすく、懐疑論や対策不要論のロジックの間違いと事実認識の間違いの両方を指摘していく。

 1回目となる今回は、以下で池田信夫氏の10ある質問の中の最初の二つについて回答を述べる。なお、池田氏の質問は、図表も含めて彼のブログの文章をそのまま引用しており、図表の出典などが不十分な場合もある。


筆者

明日香壽川

明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

1959年生まれ。東京大学工学系大学院(学術博士)、INSEAD(経営学修士)。電力中央研究所経済社会研究所研究員、京都大学経済研究所客員助教授などを経て現職。専門は環境エネルギー政策。著書に『脱「原発・温暖化」の経済学』(中央経済社、2018年)『クライメート・ジャスティス:温暖化と国際交渉の政治・経済・哲学』(日本評論社、2015年)、『地球温暖化:ほぼすべての質問に答えます!』(岩波書店、2009年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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