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ウクライナの悲劇が告げる化石燃料の終焉と脱炭素世界の到来

日本は、ドイツの失敗とエネルギー政策への「神の啓示」をどう受け止めるのか

西村六善 日本国際問題研究所客員研究員、元外務省欧亜局長

プーチン露大統領=shutterstock.com
 驚くべきことにモスクワにあるカーネギー平和財団のコレスニコフ主任研究員は、米国の「フォーリンアフェアーズ誌」の4月の最新号で、「プーチンはロシアを失う」という見出しの記事を掲げた。

 プーチンはすでにウクライナを失っている。重要なのは時間だ。今のところ、ロシア世論は平静だ。しかし、孤立したロシア経済が目の前で崩壊し、賃金や雇用、必需品や医薬品へのアクセスが失われると事態は変わる。そうなると彼はロシアも失いかねない…。

 要するに経済が悪化したら大統領の「幻想と恐怖に基づく政治」は危殆(きたい)に瀕(ひん)するという議論だ。それをフォーリンアフェアーズ誌といういわば世界の論壇の大舞台で展開したのだ。大統領のおひざ元でこのような大胆な論陣を張ったせいか、カーネギー財団のモスクワ事務所は突然閉鎖になった。

 では、ロシア国内の経済の動きを専門家は一体どう見ているのか? 2005年までロシア大統領経済顧問だったアンドレイ・イラリオノフ氏は4月中旬の時点で米国CNNのテレビ番組で「外国へのエネルギー輸出は、連邦予算の全歳入の6割近くになる。これが途絶したら戦闘は1カ月で終わる。経済制裁のせいで、既に国の財政規模は、ほぼ半減している」と言明した。

 一国の財政支出が一挙に半分になったらどれほど深刻か? 同じ規模の経済収縮が市場経済圏で起きれば衝撃は巨大だが、計画経済国家においてはそれよりもはるかに強烈な負の衝撃が襲っているに違いない。

=shutterstock.com
 もう一人のロシア経済の専門家でイギリス在住のアンドレイ・モフチャン氏が3月11日の時点でNHKのインタビューで述べた内容も同様の深刻さを浮きぼりにしている。

 同氏は、国際的な決済ネットワーク(SWIFT)からロシアが締め出されたので、「サプライチェーンが一気に崩壊し、その結果、大規模な企業倒産が起きている」と述べた。ロシアはソビエト連邦崩壊のような大混乱の時代に逆戻りし、世界からは閉ざされ、中国にだけ開かれた全体主義的な独裁国家になった」と論じた。

ロシアの戦費を払っているのはドイツか?

 一方、プーチン大統領は「西側による経済制裁は大失敗に終わった」と国民向けに強弁している。しかし、どうやら実際にはロシア経済は国際制裁によって相当激しく痛めつけられていて、もしかすると崩壊寸前という所まで追い込まれているのかもしれない。

=shutterstock.com
 しかし、まだ崩壊には至っていない。何故か? 
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