勝田敏彦(かつだ・としひこ) 元朝日新聞記者、高エネルギー加速器研究機構広報室長
1962年兵庫県生まれ。京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修了。1989年朝日新聞社入社、科学部員、アメリカ総局員、科学医療部次長、メディアラボ室長補佐などを経て2021年6月に退社。現在は高エネルギー加速器研究機構に所属。著書に『でたらめの科学 サイコロから量子コンピューターまで』。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
あの電気釜覚えてる? 誕生65年、広がるデザインの認識
「日本でも独創的なグッド・デザインを選定し推薦する制度ができれば、国内におけるデザイン思想の啓蒙(けいもう)と諸外国の日本商品のデザインに対する評価の改善に資することはもちろん、デザイン能力に対する日本人の自信を回復せしめ、ひいては盗用防止に役立つことは明らか」
高田さんがこう書くように、1957年に生まれたのがグッドデザイン賞(当時は「グッド・デザイン商品選定制度」)だった。工業デザイナーの剣持勇さんは1966年の毎日新聞に「良貨のための悪貨駆逐運動である」と書いている。
草創期のグッドデザイン賞は、日用雑貨や軽工業品、光学機器、家電品などが対象だった。これは私が持つイメージに重なる。有名な例が1958年度に選出された東芝の電気釜だ。今となっては懐かしいが、一世を風靡(ふうび)した製品だ。また1966年度選出のニコンの一眼レフカメラもそうだ。1981年度選出のソニーの携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」は、音楽を持ち歩くという文化をつくりだした。
自動車も1980年代から。1984年度大賞のホンダ(本田技研工業)のワンダーシビックのデザインが頭の中に鮮明に残っている人も多いだろう。そして