勝田敏彦(かつだ・としひこ) 元朝日新聞記者、高エネルギー加速器研究機構広報室長
1962年兵庫県生まれ。京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修了。1989年朝日新聞社入社、科学部員、アメリカ総局員、科学医療部次長、メディアラボ室長補佐などを経て2021年6月に退社。現在は高エネルギー加速器研究機構に所属。著書に『でたらめの科学 サイコロから量子コンピューターまで』。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
政治家の頭の中をフーリエ変換したい 周期的に繰り返される不要論
高校で三角関数を学ぶのは無駄なのか。最近、そんな議論がインターネットで巻き起こった。きっかけは、5月17日の衆議院財務金融委員会での藤巻健太議員(日本維新の会)の発言だった。
藤巻氏は「高校生に金融を学んでもらうにはどうすればいいか」というテーマで文部科学省の森田正信・大臣官房審議官らに質問。その中で「三角関数よりも金融経済の方が必要」という発言をした。少し長くなるが、録画(衆議院インターネット審議中継ビデオライブラリ)から、その発言に至るまでの流れを振り返ってみよう。
「私は大学受験の時、英語が苦手だったもんで、得意の数学で得点を稼ごうと、数学ばかり勉強しておりました。 浪人時代は家で一人で朝から晩までサイン、コサインをやっておりました。貴重な10代の大事な日々をサイン、コサインに捧げておりました。 受験の翌日以降、この20年ほど、サイン、コサインは一度も使っておりません。あの日々は一体何だったのか、いまだに考えます」
「多くの人にとって、三角関数よりも金融の知識の方が人生を生きていく上で、大いに必要ではないかということです。そういったものを教えることこそが教育ではないかと私は考えております。文科省としては、全国の高校生が学ぶ知識として、三角関数と金融経済、どちらが優先度が高いとお考えなのでしょうか」
こう迫られた森田氏も困ったと思うが、藤巻氏は「『三角関数よりも金融経済を学ぶべきではないか』/金融教育をテーマに、財務金融委員会で議論させて頂きました」とツイートした。案の定、ネットでは批判が殺到した。こんな具合である。
「三角関数の知識なしで、金融経済が学べるんでしょうか?金融系のITにかかわっていますが、無茶苦茶(むちゃくちゃ)数学使いますよ」「金融経済は大事。三角関数も知ることで可能性は広がる。使うか使わないかは、また別の話」
他にも批判はいっぱいあるが、それはネット検索で見てもらうとして、そもそも藤巻氏が嫌っているサイン、コサインとは何だったのだろう。