下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授
カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
人類が生み出した「戦争」というフォーマットを社会心理学的に考える
少し間が空いてしまったが、前稿で「戦争の心理」をあれこれ考えた(『プーチンの心理を読み違えた西側諸国 - ウクライナ侵攻のパラドックス』)。ロシアによる侵攻から4カ月が過ぎようとしているが、ウクライナの生々しい情勢から目が離せない。あらためて戦争ほど人のこころを踏みにじるものはないが、同時に戦争ほど人のこころの本性を垣間見せるものもない。今回のロシア側の侵略意図は、旧来の「戦争」のスタイルを引きずっている面が大きい。反面、情報戦やハイテク兵器の活躍など、新しい面も無視できない。人類が生み出した「戦争」という自滅的な災厄、そのフォーマットは今後どうなっていくのか、考えてみたい。
まずは、今回の戦争が旧来のスタイルを引きずっていると思われる点を、特に社会心理学的な観点から、以下にまとめてみよう。