専門家との適切な関係づくりが喫緊の課題ではないか
2022年06月30日
期待していたが、当てが外れた。政府のコロナ検証会議(正式名称「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」)が6月15日に出した報告書だ。
内閣官房の公式ウェブサイトに入ると、「新型コロナウイルス感染症へのこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に向けた中長期的な課題について」と題する報告書を読むことができる。A4判で20ページ余。目次には、「課題」と「方向性」を示した9項目の柱が立っているが、そこに「専門家」の3文字は見当たらない。「保健所体制の強化」や「検査体制の強化」などはあっても「専門家組織の強化」は柱の一つになっていないのである。
ページを繰っていくと、「サーベイランスの強化等」と題する項目の一隅に「科学的妥当性と透明性が担保された専門家の科学的助言」という小項目が見つかった。行数にして16行。専門知をめぐる検証会議の見解は、ここに凝縮されているということだろう。要約すれば、こうなる。
・危機対応の科学的議論では、データが限られていても対策を進められるような思考法があってよい(具体的には、「説明的仮説〈アブダクション〉」のアプローチが示されている)。
・危機のときでも情報を迅速に集め、共有し、分析して結果を公表できる態勢を整えることや、「専門家助言組織」を外部の専門家と連携させることが必要。
・専門家の役割は科学的な助言をすることにあり、判断を下すのは政治や行政。
もっともな提言だ。だがこれを、どのような経験から導きだしたのかが定かではない。「専門家組織」のあるべき姿を提示するのならば、それがこの2年間どうだったかを調べることから始めなくてはならないはずだ。「検証」とはそういうことだろう。
もちろん、同じ政府内の一組織がもう一つの組織についてあれこれ言うのは、はばかられるのだろう。だが「検証会議」の役目は、
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