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レガシーの重荷に苦しんでいるのは東京だけじゃない

「遺産」や「パーク」に認定された地域、苦戦と成功の分岐点は?

香坂 玲 東京大学大学院教授(農学生命科学研究科)、日本学術会議連携会員(環境学)

課題は、温度差、利害対立、分かりにくさ……

韓国・済州島の博物館の入口には、ユネスコのジオパーク、エコパーク、世界自然遺産の3冠の認定地であることを示す看板が立っている
拡大韓国・済州島の博物館の入口には、ユネスコのジオパーク、エコパーク、世界自然遺産の3冠の認定地であることを示す看板が立っている
 まず、登録された遺産やパークを運営する組織側の課題がある。主導していた首長やリーダーの交代により、取り組みが停滞するとか、あるいは目玉の観光地の所在する自治体以外が、自分ごととして捉えず、内省化されなかったり、消極的になったりといったこともある。

 このように、首長や組織の変化があった際の自治体内の熱意の低下、複数の自治体で登録した際の自治体間の思惑のずれなどの課題が指摘されている。筆者は、これをエリア内の「温度差」と表現する。

 あるいは、もともとは協議会や市民団体がフラットで柔軟に運営していた形態が、登録に伴って定期的なチェックや書類の作成などが求められ、それによってやや硬直的と感じたり、本来の地元密着感が薄らぐと感じたりするケースある。

 次に隣接するエリアとの利害対立も課題となる。

 特に農林漁業の関係者が、必ずしも歓迎しないパターンだ。環境に関わる保全地域の認定であれば、歓迎しない要因として、野鳥の飛来による食害、悪臭、死骸やふんなどが挙げられる。野生鳥獣あるいはその死骸やふんの管理は、鳥インフルエンザなどの感染病にも関係するだけに厄介だ。

 また、近年では、再生可能エネルギーの促進と土地利用や景観との相克も明らかになっており、再エネ、観光・遺産、そして農林業の「三つどもえ」の様相を呈しているところもある。

新潟県佐渡市の船着き場には、「佐渡金銀山を世界遺産に」というのぼりがあふれている拡大新潟県佐渡市の船着き場には、「佐渡金銀山を世界遺産に」というのぼりがあふれている
 第三に、認定制度自体の分かりにくさ、誤解、そして序列意識なども、各地域で展開をしていくうえでの課題といえる。

 国際的な認定制度に限っても、ユネスコが認定する世界遺産、エコパーク(生物圏保存地域)、ジオパーク、国際連合食糧農業機関(FAO)による世界農業遺産などがある。知名度の高い世界遺産を別として、その内容はおろか名称さえあまり認知されておらず、認定制度の知名度の低さと分かりにくさが課題となっている。

 また、その結果として、世界遺産を頂点とする序列の意識も指摘されている。

 例えば、世界遺産登録を目指す新潟県佐渡市では、船を下りると「佐渡金銀山を世界遺産に」というのぼりが目立ち、既に取得をしているジオパーク、世界農業遺産は目立たない。世界遺産が大規模な観光客向け、ジオパークや世界農業遺産は「通」向けというところですみ分けができている可能性があるが、やや違和感がある。

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筆者

香坂 玲

香坂 玲(こうさか・りょう) 東京大学大学院教授(農学生命科学研究科)、日本学術会議連携会員(環境学)

東京大学農学部卒業。ドイツ・フライブルグ大学の環境森林学部で博士号取得。国連 環境計画生物多様性条約事務局(農業・森林担当) に勤務。帰国後、2010年の生物多様性条約COP10に携わり、金沢大、東北大、名古屋大教授などを経て現職。 著書に「地域再生」「生物多様性と私たち」「有機農業で変わる食と暮らし」(岩波書店) 編著書に 農林漁業の産地ブランド戦略―地理的表示を活用した地域再生 など

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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