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レガシーの重荷に苦しんでいるのは東京だけじゃない

「遺産」や「パーク」に認定された地域、苦戦と成功の分岐点は?

香坂 玲 東京大学大学院教授(農学生命科学研究科)、日本学術会議連携会員(環境学)

地域の魅力を一本に絞って勝負する手も

 「畳む」ところを決めるのは、当事者だけでは困難な場合も多く、「住民が主役」といったフレーズが重荷にもなり、方向性を誤ると感情的にもなってしまい、住民同士の争いに発展する可能性もある。

糸魚川ジオパークにある「白池」。水面に山並みが映る=新潟県糸魚川市拡大糸魚川ジオパークにある「白池」。水面に山並みが映る=新潟県糸魚川市
 もちろん、「地域ならではの魅力」があればこそ、登録する機運が高まり、登録する側も認めるわけだが、実態にはかなりバラツキもあり、今後、人口減少と環境の変化により、さらに難しい局面に直面するエリアも増えそうだ。

 先述した佐渡の世界遺産は、登録の申請を巡って日韓の外交問題にまで発展している題材でもある。韓国側は遺産登録に名を借りた政治的な動きの可能性が高いが、受ける日本の側は冷静に対処することはもとより、「メンツ」「力み」から登録ありきではなく、どのような取り組みが本当に長続きするのか、地に足の着いた議論が欠かせない。

 他方、同じ新潟県において、ユネスコ世界ジオパークに登録され、地味ではあってもジオ(地質)資源一本に絞ってPRをし、都内の進学校などとの関係を深め、修学旅行など教育関係に特化した需要を着実に取り込んでいる糸魚川市の事例もある。

 糸魚川といえばフォッサマグナを思い浮かべる人も多いと思うが、数億年前に日本列島が形成される際にできた巨大な溝、ラテン語で「大きな溝」を意味するフォッサマグナを地域資源として活用する取り組みに早くから着手してきた。

 フォッサマグナや地球の歴史などについて学習できるパークや博物館、川によって山から運ばれてきたヒスイなど多様な鉱石を観察・採集できる海岸などを見どころとし、比較的硬派なコンテンツで勝負をする作戦だ。

 そのまま他の自治体に移植できる内容ではないが、環境や文脈が全く異なる自治体であっても工夫の仕方、ユニークさで勝負をするあたりは参考になる面もあろう。

 繰り返しになるが、今後は、アフターコロナを見据え、遺産、パークといった「地域認定」の功罪について冷静に振り返り、「自然体」の展開を考えていくことが欠かせない。

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筆者

香坂 玲

香坂 玲(こうさか・りょう) 東京大学大学院教授(農学生命科学研究科)、日本学術会議連携会員(環境学)

東京大学農学部卒業。ドイツ・フライブルグ大学の環境森林学部で博士号取得。国連 環境計画生物多様性条約事務局(農業・森林担当) に勤務。帰国後、2010年の生物多様性条約COP10に携わり、金沢大、東北大、名古屋大教授などを経て現職。 著書に「地域再生」「生物多様性と私たち」「有機農業で変わる食と暮らし」(岩波書店) 編著書に 農林漁業の産地ブランド戦略―地理的表示を活用した地域再生 など

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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