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プーチン大統領の追い出しを図る西欧諸国の思惑

ロシアの民主化は可能か? 地政学的な地殻変動について考える

西村六善 日本国際問題研究所客員研究員、元外務省欧亜局長

 バイデン大統領は3月26日、ポーランドで演説し、プーチン大統領を虐殺者、独裁者、戦争犯罪人だと呼んだ。彼はこの戦争で勝利者になることは決してあり得ないだけでなく、「どんなんことがあっても(For God’s sake)、この男を権力の座に置いてはならない」と叫んだ。

ロッキード・マーチン社の工場で、従業員らを前に演説をするバイデン大統領=2022年5月、米アラバマ州トロイ拡大ロッキード・マーチン社の工場で、従業員らを前に演説をするバイデン大統領=2022年5月、米アラバマ州トロイ

 ドイツのショルツ首相も去る5月26日、世界経済フーラム主催のダボス会議で演説し、「プーチンが勝利を手にするようなことは決して許さない」と述べた。「プーチンは力で世界を支配しようとしている。自由とか国の主権、自決権などはプーチンだけが決める。これは帝国主義だ。しかし、プーチンはウクライナ戦で全ての戦略的目標において失敗を喫している」。シュルツ首相はこの演説で「プーチン」と呼び捨てにしてそう述べた。

 この戦争がどういう形で終結するのか現時点では不明だ。バイデン大統領は、5月31日付のニューヨークタイムズ紙への寄稿文で「この戦争は最終的には外交によってのみ決定的に終結する」と論じた。

 その前提で、将来ロシアと何らかの外交交渉が行われるなら、西側はバイデン大統領自身が「虐殺者、独裁者、戦争犯罪人」と呼んだ当のプーチン大統領と交渉することはあり得ないだろう。このような交渉では戦争終結だけでなく、その後のロシアとの国家関係、協力関係などを取り決めるはずなので、なおさらそうだろう。

ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議後に記者会見するドイツのショルツ首相=2022年6月、ブリュッセル拡大ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議後に記者会見するドイツのショルツ首相=2022年6月、ブリュッセル
 米国と欧州の指導者がプーチン大統領をまともな交渉の相手とは認めないと断言する以上、ロシアの政権の変更を視野に入れていることは明らかのようだ。

 実は、バイデン大統領は上記の3月26日のポーランドでの演説後、記者団から「ロシアの政権変更を意味するのか?」と問われ、米国当局者は「そうではない」と否定した。しかしこれは表向きの応答であって、米国は明らかにロシアの政権変更を意図していると見るべきだ。とにかく、米国や欧州はプーチン大統領自身が権力を手にして生き残るのを許容しないだろう。

 プーチン政権の亜流が生まれても恐らく相手にはしないだろう。欧米首脳は実際のところ、当然ロシアの民主化を視野に入れ、行使できる影響力があれば、それを最大限使おうと決心していると想像する。

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筆者

西村六善

西村六善(にしむら・むつよし) 日本国際問題研究所客員研究員、元外務省欧亜局長

1940年札幌市生まれ。元外務省欧亜局長。99年の経済協力開発機構(OECD)大使時代より気候変動問題に関与、2005年気候変動担当大使、07年内閣官房参与(地球温暖化問題担当)などを歴任。一貫して国連気候変動交渉と地球環境問題に関係してきた。現在は日本国際問題研究所客員研究員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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