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ボールが医療側に投げられたままの新型コロナ「2類相当」の見直し

医師会が「5類」への引き下げに及び腰になる「オトナの事情」

川口浩 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長


 年間に約140万人が死亡する日本において、その死因の1%にも満たない疾患のために政府は3度の補正予算を組み、2020年度だけで総額77兆円の「コロナ予算」が計上された。同年の国家予算が106兆円、東日本大震災の復興予算が10年あまりの総額で32兆円であることからも、「コロナ予算」がいかに異次元の規模かがわかる。

亡国のコロナ政策

厚生労働省が入る合同庁舎=東京都千代田区
 この予算は、持続化給付金、雇用調整助成金、Go Toキャンペーンなどの社会インフラに加えて、医療機関への補助金や医療費加算などの医療インフラにもやみくもにバラまかれた。例えば、医療体制の拡充費用7.8兆円の大半をコロナ向け病床の確保に投じたが、確保できたのは約3.9万床にとどまった。1床確保するのにざっと2億円もかかった計算になる。重症者病床1床当たり1950万円の補助金を出すなどして確保に努めたが、補助金を受け取りながら入院を断る「幽霊病床」病院も目立った。日本のコロナ政策は「歴史的な無駄遣い」を繰り返してきたと言わざるを得ない。

 問題は、政府や専門家会議が、何度痛い目に遭っても学習しないことである。波が落ち着いた「なぎ」の時に次の波を想定した制度設計に着手することは彼らの性分には合わないのか。今回も7回目の大波が来てから慌てふためいてその場しのぎの対策に右往左往している。例の分科会会長は7月24日のNHK日曜討論で「今まで国民に自粛を強いてきたが、これからは自助努力で何とかしろ」と君子豹変(ひょうへん)した。8月2日にはこの会長を含む専門家「有志」が政府を批判して、新型コロナの発生以来続けてきたコロナ政策の抜本的な見直しを迫った。これに対する島根県知事の「責任逃れをするために仲間割れしているようにしか見えない。不誠実だし責任感に欠けている」という批判は、一諮問機関に過ぎない専門家会議の意見を主体性のない政府がうのみにして迷走を繰り返したコロナ政策のずさんさを的確に表現している。

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