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道路トンネル工事で2年間のバス代行となったJR陸羽西線

所要時間は1.7倍に 赤字ローカル線見直しの中で、その行方は?

米山正寛 ナチュラリスト

 鉄道が不通となって代行バスが走るのは、自然災害で線路の路盤が崩れたり橋が流されたりした時と相場は決まっている。ところが山形県内を走るJR陸羽西(りくうさい)線は、近くで建設が進む地域高規格道路のトンネル工事を理由に、今年5月から約2年間の全線運休となり、代行バスが走り始めた。全国規模でJRの赤字ローカル線の存廃に関心が高まる中、このバスに乗ってローカル線の今後に思いをめぐらせた。

拡大高屋のバス停留所に到着した新庄発余目行の代行バス。陸羽西線の高屋駅は、坂道を登った右側斜面の上にある=山形県戸沢村

内陸部と日本海側を結ぶ鉄路

 陸羽西線は山形新幹線(奥羽線)の終点である新庄駅(新庄市)と羽越線の余目駅(庄内町)とを結ぶ長さ43kmの路線。非電化の単線で、途中には八つの駅がある。県庁所在地の山形市などがある県内陸部と日本海側の庄内地方を、県内で結ぶ唯一の鉄路でもある。この地方ローカル線が、長期にわたって閉ざされることになった。

拡大陸羽西線のバス代行区間=JR東日本の資料を改変

 陸羽西線を長期の運休にした工事は、国道47号を改良して地域高規格道路を整備するのに伴い、新たに建設される仮称・高屋トンネル(全長350m)を陸羽西線の第2高屋トンネル(全長222m)の直下で掘り進むもの。現場付近は最上川に沿ったわずかな低地に国道47号と陸羽西線が並走する区間で、国道には急カーブやスノーシェルターが続き、災害や事故による全面通行止めがしばしば発生していた。そこで安全性の向上などを理由に、新しいトンネルを含む代替路(高屋道路、延長3.4km)を設けることになった。

3mの距離で交差するトンネル工事

 国土交通省東北地方整備局の資料によると、二つのトンネルは上下約3mの距離で交差し、断面の小さな鉄道トンネル(第2高屋トンネル)の下をより大きな断面の道路トンネル(仮称・高屋トンネル)が通る。当初は道路トンネルの施工時に周囲へ対策を施せば、工事中も列車の運行を続けられると考えられていた。

拡大二つのトンネルの位置関係=国土交通省の発表資料

 だが、構造解析の結果からは、道路トンネルの掘削によって鉄道トンネルの変形などが起こる可能性が浮かび上がった。そこで

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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) ナチュラリスト

自然史科学や農林水産技術などへ関心を寄せるナチュラリスト(修行中)。朝日新聞社で科学記者として取材と執筆に当たったほか、「科学朝日」や「サイアス」の編集部員、公益財団法人森林文化協会「グリーン・パワー」編集長などを務めて2022年春に退社。東北地方に生活の拠点を構えながら、自然との語らいを続けていく。自然豊かな各地へいざなってくれる鉄道のファンでもある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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