メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「過去にも温暖化」「2℃ぐらい誰も気づかない」……間違いだらけの懐疑論

温暖化懐疑論および対策不要論に改めて反論する2

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 前回に続いて、2022年1月19日に池田信夫氏が、Google日本法人社長宛ての公開質問状にある10の質問に回答していく。今回は質問3から5まで、主に温暖化問題の事実関係や科学的認識に関するものだ。

 なお、前回でも述べたように、質問や図表は、すべて池田氏のブログのものをそのまま載せている。このため、図表の出典などが不十分な場合もある。

人類史上、最も暑いのは現在か

図3 中世温暖期(NOAA)図3 中世温暖期(NOAA)
 池田氏の質問3:今は人類の歴史上いちばん暖かい時期でしょうか?
 図3はアメリカの海洋気象庁(NOAA)がいろいろな研究のデータを集めたものですが、西暦1000年ごろは今とほぼ同じ気温で、中世温暖期と呼ばれています。この原因も明らかに人間活動ではなく、太陽活動が活発だったためと推定されています。今はそれと同じぐらい暖かくなっていますが、温暖化と寒冷化は周期的に繰り返しており、このままずっと暖かくなるとは限りません。

 池田氏の質問3に対する回答

干ばつで衰弱して死んだヤギたち。強い死臭が漂う=2022年1月、ケニア北部モイテ干ばつで衰弱して死んだヤギたち。強い死臭が漂う=2022年1月、ケニア北部モイテ
 「中世温暖期(西暦800年から1400年)が存在したから現在の温暖化は人類が引き起こしたものではない」「温暖化と寒冷化は周期的に繰り返しており、このままずっと暖かくなるとは限りません」という議論も論理的に間違っている。

 第一に、意図的かどうかはわからないが、図3は全球(世界全体)ではなく、北半球のみの温度変化を示している。この図から全球の温度変化を議論することはできない。

 第二に、実際には、この時期の熱帯の太平洋地域など、現在よりもずっと気温が低かった場所もあることも明らかとなっている。全体として、暖かかった場所と寒かった場所を平均すると、「中世温暖期」は、20世紀前半から半ばにかけての温暖化と同程度というのが研究者のコンセンサスだ。

 第三に、20世紀後半になって、地球の大部分で中世温暖期の気温をはるかに超える気温の上昇が見られている(例えば、Mann et al.2008)。

 繰り返しになるが、現在起きている気温上昇と過去の気温上昇は、全く異なるメカニズムで起きている。それを理解することが、今の気候変動問題を考える上で極めて重要だ。

温暖化はいままでも起きていたのか

図4 寒冷化現象(気象庁)
図4 寒冷化現象(気象庁)
 池田氏の質問4:温暖化は今までずっと起きているのですか?
 図4は気象庁のデータですが、北半球では1960年ごろから寒冷化の傾向がみられました。このため1970年代には「地球は寒冷化する」とか「氷河期に入る」という論文がたくさん発表されました。このように気候変動というのは当てにならないものです。

 池田氏の質問4に対する回答

・・・ログインして読む
(残り:約1877文字/本文:約2996文字)