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4.多様な人材が「化学反応」を起こす

出島に集まる好学者④ オープンイノベーションを支える独自の仕組み

永井 浩二 (公財) 川崎市産業振興財団 iCONM 副センター長

 トーマス・エジソンは、第2次産業革命で工業化が進展した時代に、電球(正しくは、電灯という“システム”を開発し商用化した)をはじめ、現代世界を定義する機器を多数発明し、画期的なイノベーションを社会実装へと導いた。

 「世界が今本当に必要としているものを創るのだ」の言葉通り、そのプロセスは、全く違う分野のエンジニアと議論しながら、アイデアを実践的な実験の繰り返しによって具現化していくものだったようだ。まさに、組織の枠組みを超えて複数の企業や大学等が共同で開発するオープンイノベーションの先駆者である。さらにいま、多くの分野の課題を複合的に解決するための製品・サービスおよびインフラがより求められており、オープンイノベーションがあらためてクローズアップされている。

「ヒト・モノ・チエの貿易港」としての出島

 公益財団法人川崎市産業振興財団は、羽田空港の対岸に位置する川崎市殿町地区(キングスカイフロント)において、オープンイノベーションのための体制や仕組みを整備。ナノバイオテクノロジーを駆使した研究開発から社会実装につながる成果を創出している(本連載「1.『ナノDDS』研究のグローバルセンターへ」を参照)。

 財団が2015年に設立したナノ医療イノベーションセンター(通称:iCONM=アイコン)を中核に、「あるべき社会」のビジョンを設定し、既存分野・組織の壁を取り払い、異なるアイデアやテクノロジーが交わる産学官金連携による社会実験を展開してきた(詳細は、イノベーションネットアワード〈地域産業支援プログラム表彰事業〉の事例紹介を参照)。

 川崎市臨海部は、海外から鉄鉱石やボーキサイトといった鉱物資源の他、化石燃料を輸入し、匠(たくみ)の技術により高品質の鉄鋼、アルミニウム、化成品などを製造して海外に輸出してきた。いわゆる日本の高度経済成長期を支えた「加工貿易」であるが、同様のコンセプトで人材や知財、技術の原石を集め、それらを磨き上げて世界に輩出することも私たちの使命だと感じている。

独自の研究開発支援体制を構築

 財団は、文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」を自治体系の機関として唯一受託し、iCONMを中核拠点にプロジェクトCOINS(COI川崎拠点)を推進(2013-2021年度)した。世界と伍(ご)する研究開発力(研究者)を有したことはもちろん、プロジェクト開始時から体制構築に取り組んだ研究推進機構の役割が成果創出に寄与した。

 研究推進機構は、民間企業にて経験を積んだキャリア人材を招聘(しょうへい)し、研究支援・社会実装の実践など産学官連携による研究開発戦略を立案する。参画組織が抱える「しきたり」や利害から中立的なガバナンスを設定し、オープンイノベーションを推進していく研究支援の主体、つまり、多様性のるつぼである「出島」で効率よく化学反応を起こさせるための触媒となったのである。

人と人をつなぐ

 多様性が高いほど化学反応が起きやすいが、しっかりと反応を制御しないと時に暴走してしまう。

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筆者

永井 浩二

永井 浩二(ながい・こうじ) (公財) 川崎市産業振興財団 iCONM 副センター長

名古屋大学農学部卒業。農学博士(東京大学)。山之内製薬株式会社に入社し、産業技術総合研究所等にも籍を置いて醗酵(はっこう)天然物からの創薬研究に従事。アステラス製薬株式会社発足時より、研究所のマネジメント職を歴任。その後、大鵬薬品工業株式会社で研究所長を務め、2019年よりiCONMに勤務。COIプロジェクトの研究推進コーディネーターを経て、本年4月より現職。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです