メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

学者たちの沈黙~エンターテイナーが解説する「旧統一教会」「国葬」問題に思う

価値判断の前に、市民が考え・行動するためのニュートラルな情報を

三田地真実 行動評論家/言語聴覚士

 社会的に大きく取り上げられる時事問題について、その是非を問うために歴史的背景やそこに至る経緯をもう少し詳しく知りたい、そう思って様々な問題をいつも眺めている。まずは、賛成・反対といった価値判断をなるべく入れない形での情報という意味だ(真に価値判断がない情報というのは多分あり得ないだろうが、なるべくニュートラルという意味においてである)。

 今はもちろん「旧統一教会」と「国葬」がホットなテーマで、大メディアでも連日これらの問題を取り上げて報じている。そこから聞こえてくるのは、「~~はけしからん」といったトーンのすでに価値づけされた内容が主に見受けられる。しかし、本当に今、一般市民(私もこのテーマに関しては全くの素人だ)が知りたいのは、「そもそも、旧統一教会とはどんな集団で、どんなヒストリー(歴史)があって、今に至っているのか」、あるいは「そもそも、『国葬』とは何なのか」という基本的な情報である。そういう情報をその領域の専門家・識者という人々が広く一般の人に届くように発信しているのを余り見かけたことがない。

拡大東京・日本武道館で行われた吉田茂元首相の国葬=1967年10月31日、東京都千代田区
拡大元信者が保管していた「原理講論」と旧統一教会の創始者、文鮮明氏らの写真=2022年7月

わかりやすく、タイムリーに伝えてくれる動画サイト

 本来ならばその分野の専門家が語るべき内容をわかりやすく伝えてくれているという意味で、ここ最近、一般市民の私がすぐにチェックするYou Tubeがある。

 中田敦彦氏の「ユーチューブ大学」がそれだ。

 ホワイトボー1枚に話の要点を絞ってまとめ、その横で彼が話をするというシンプルな構成(ややこしいアニメを使ったりしていないという意味で)にもかかわらず、基本的な情報、背景が知りたい、という気持ちに応えてくれている。そして、かなり多くの人がそういう情報を探しているのでは? という推測が、彼が“勇気を持って”配信した「旧統一教会」の解説動画の再生回数からも成り立つのではと思う。8月23日に公開された「旧統一教会①」は9月18日現在で、172万回の再生回数を記録している。8月24日に公開された続編の「旧統一教会②」も97万回である。

 この問題をよく取り上げたと思って視聴していたが、中田氏が参考にしたという書籍2冊は、1冊が旧統一教会擁護派(元信者が執筆者)で、もう1冊は逆に批判的なものだということを冒頭で述べて、「できるだけニュートラル(中立な)立場で伝えたい」ということを再三繰り返しながらの1時間だった。2本目は46分の動画で旧統一教会の成り立ち、歴史、さらには何が問題となっているのかの整理まで本当にわかりやすくコンパクトに解説している。

 46分の動画を追加公開するまで中田氏自身どれだけ悩んだか、そしてどうして公開に踏み切ったかという自分の心情をそのまま語る別の動画(【YouTubeとの向き合い方】旧統一教会の授業をするまでの葛藤と覚悟)も公開している。

拡大「中田敦彦のユーチューブ大学」のトップページ

 「自分は専門家でもない、ただの勉強家、勉強したことを皆さんと共有している」と言う彼の言葉に正直、胸を打たれた。

 この問題について公に語ることは、社会的立場を背負っている者としては、できれば避けた方が「余計なリスクを引き受けずに済む」というのは確かだろう(事実、こうやってこの原稿を書いている自分ですら、余計なことを言わない方が……という気持ちが過っている)。

 動画の内容についてコメントすることは本稿の趣旨ではないので、ぜひ各自で視聴して何が語られているかは実際に目で見て確認してほしい。ただ、言えることは私には「これこそが、今、知りたかったことだ」ということだ。

 コメント欄にも同じ意見があふれている。そして、この動画を公開した中田氏の勇気をたたえる声も同じ位あふれている。

 確かに中田氏がこれまでに公開している様々なジャンルの動画の中でも、やはり「歴史物」が飛びぬけて面白い。「古事記」などはその筆頭格と言っていいほどの熱弁・熱演ぶりだ。面白い理由の大きな1つは彼が芸人であることは確かだろう。相手を喜ばせてなんぼのエンターテイナーだからこその語りは、話している内容はいたって真面目なものであっても、見ている者をついついひき込む魅力が満載だ。

 その彼が「あえてリスクを冒しても」政治的なテーマを取り上げた。このことは、「俺がやらねば、誰がやるんだ!」という思いが根底にあったのではないかと推測している。

 8月27、28日、今度は、彼は「国葬」を取り上げた。国葬の他に、国民葬、合同葬といった葬儀のスタイルがあることも彼の動画チャンネル(【国葬①】安倍晋三元首相の国葬をどう考える?その歴史と論点を解説!、【国葬②】岸田政権の思惑と保守層への配慮)で明確に解説されていた。

 多くの国民が「今」知りたいことを「タイムリーに」伝える、そのスピード感にもあっぱれである。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

三田地真実

三田地真実(みたち・まみ) 行動評論家/言語聴覚士

教員、言語聴覚士として勤務後、渡米。米国オレゴン大学教育学部博士課程修了(Ph.D.)。専門は応用行動分析学・ファシリテーション論。2016年からオンライン会議システムを使ったワークショップや授業を精力的に行っている。2011年星槎大学共生科学部教授、2013年より同大学大学院教授。著書に「保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック」など。教育雑誌連載と連動した「教職いろはがるた」(https://youtu.be/_txncbvL8XE)の動画配信中!

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

三田地真実の記事

もっと見る