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利用と保全の調和を目指す「自然共生サイト」

国際標準となった自然との「共生」

松田裕之 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

 2010-20年の生物多様性愛知目標の20目標のうち、11番目では、自然保護区および「その他の効果的な地域ベースの手段(OECM)」(の合計)を17%(海域は10%)にするという数値目標が掲げられた。現在では2030年までに保護区およびOECMを陸と海でそれぞれ30%という目標が掲げられている(30by30)。OECMは愛知目標から登場した言葉と言えるが、当時は略語で特記することはなく、法的保護区に対して「その他の効果的な手段」という定義があった(国際自然保護連合(IUCN )保護地域管理カテゴリー適用指針2008)。現在では保護区以外の効果的手段と定義されている(CBD/COP14 2018 )。つまり、OECMは保護区ではない。自然保護区の定義はIUCNの指針(2008)で確立しており、厳正保護区だけでなく、保護と持続的利用を図る地域を含む。

知床とOECM

拡大夏の知床半島=2015年8月25日、朝日新聞社機から
拡大厳冬の海で操業するスケトウダラ漁船=2005年1月18日、北海道羅臼沖

 知床が2005年に世界自然遺産に登録されたとき、半島沿岸の海域が定置網漁業や沿岸漁業の漁場だったことが問題になった。しかも、政府は、世界遺産登録のために法的規制を強化しないと地元の漁業協同組合に約束した。それでも、漁協自身がスケトウダラの自主的禁漁区を拡大することが評価され、無事に登録できた。これは法的規制以外の、漁業を主目的とする漁民の取り組みが理解を得たといえるだろう。

拡大=筆者作成
 私個人の見解だが、これらを①「利用しない保護区」、②「保護と利用の調和を図る保護区」、③「利用と保護の調和を図るOECM」と整理したい。つまり、③は主目的が保護より利用である地域とみなすのがわかりやすい。環境省では②と③に該当するものを含めて「自然共生サイト」(仮称)とみなし、認証制度 を設けつつある。他省庁の法令などでも、「生物多様性に配慮した森林施業」という表現は以前からみられる。これもOECMとみなしえるだろう。知床も、上記の禁漁区は国立公園や世界遺産地域の外側であり、共同漁業権の範囲内は、当事者が申請してOECMとみなすべきだろう。

 ただし、生物多様性への配慮がOECMの主目的にとって有益でなければ、たとえば農地の場合に自然保護への配慮が農業生産性を落とすなら、自然共生サイトの普及は進まないだろう。ではどんな相乗効果があり得るのか。相乗効果があるなら、上記のような政策誘導をせずとも、農業生産性向上のために自然に配慮したはずである。

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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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