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深(刻)化するディープフェイク 本物そっくりの映像に対策はあるのか?

米国の第一人者が語る最前線 問われるAI技術者の倫理

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

 ロシアがウクライナに侵攻した時点ですでに、ゼレンスキー大統領は自分のフェイク映像が出回るだろう、と予言していたという。その通り、ウクライナ軍に自ら降伏を呼びかけるリアルな映像が世界を駆け巡った(今年3月)。予言していてもその影響は甚大、フェイクと断定されるのに時間がかかり、ユーチューブやフェイスブックなどが削除したのは、すでに世界に拡散した後だった。その影響を拭い去るのには、さらに何日もかかった。

 ディープフェイクが世界を席巻している。その技術はどのように進化し、今どこまで進んでいるのだろう。人の目で見破れるものなのか。またどのような社会的問題を生じ、対抗策はどうなっているのか。誰しもが知りたいところだろう。

ウクライナのゼレンスキー大統領の「ディープフェイク動画」とされる画像。米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」のサイトから
ウクライナのゼレンスキー大統領の「ディープフェイク動画」とされる画像。米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」のサイトから

 タイムリーに、米国電気電子学会(IEEE)バイオメトリクス(生体計測・生体認証)部会主催の講演を聞いた。題して「ディープフェイクと戦う」。講演者のH. ファリッド(Hany Farid)教授は、ダートマス大学計算科学部の教授・副学部長で、写真・イメージの犯罪科学(forensics)について、複数の著書がある。米国連邦政府の行政機関にも協力している。この講演で教授は、ディープフェイク技術の最前線を歯切れ良く紹介し、自らの研究を含めた対抗策を詳述した。

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