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いったい何が決まったのか。日本にはどう影響するのか。

改めて国連気候変動会議(COP27)の意味を考える㊤

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 昨年11月、会期を2日間延長してエジプトのシャルム・エル・シェイクでの国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開かれた。3回にわたって会議の内容を紹介するとともに、日本の気候変動政策、外交政策、国民の気候変動問題に対する考え方などへの影響について考えてみたい。

グリーンウォッシュと人権問題

COP27会場内でのアクション。白い服は囚人が着る服であり、エジプト政府の人権抑圧を暗に批判している=UNFCCCのサイトCOP27会場内でのアクション。白い服は囚人が着る服であり、エジプト政府の人権抑圧を暗に批判している=UNFCCCのサイト
 スウェーデンの気候アクティビスト、グレタ・トゥンベリはCOP27を欠席し、その理由を「COPは、うそやごまかし、グリーンウォッシュ(うわべだけの気候変動対策)を訴える機会になってしまっている」とした。また、『人新世の資本論』の斎藤幸平氏も「増え続ける二酸化炭素の排出量を見るならば、27年間のCOPは全くの失敗である。産業革命からの気温上昇を「1.5℃」に抑えるための大胆なシステムチェンジに向けた取り組みがCOPから出てくる可能性はゼロだ」「気候正義の理念にのっとった選択肢は、アラーたちと連帯してCOP27をボイコットし、大失敗させることだったはずである」と、それぞれ毎日新聞と東洋経済オンラインに書いている。

 斎藤氏の言葉の中にある「アラー」は、エジプトの人権活動家で、2021年12月から刑務所で服役中のアラー・アブドゥルファッターフ氏のことだ。COP27開催に合わせて、6カ月前から食事拒否のハンストを続けており、最近では水を飲むことも拒否しはじめた。

 気候変動問題は、まさに人権問題でもあることから、また現エジプト政権の人権弾圧もあり、COP27において「人権」は大きなキーワードの一つであった。今回、筆者はGlobal Greensという世界的な組織が公募した代表団の一人として参加したのだが、事前に現地関係者から「首都カイロでアクションしたら捕まる」という警告があった。それでも、COP27会場では、エジプトの政治犯が着せられるという白い服を着た数十人が無言のデモを行い、バイデン米大統領がエジプトを訪れる11月11日には、大規模な反政府デモもエジプト全土で計画されていた(実際には実施されなかった)。

COPは不要か? ボイコットすべきなのか?

 ただし、斎藤氏のCOP不要論やCOP27はボイコットすべきだったという提案には、COPおよび気候変動問題の国際交渉に対する誤解あるいは無理解があるように思う。

 まず、確かに、温室効果ガスの早急な大幅排出削減を達成するという意味では、これまでのCOPはすべて失敗だと言える。しかし、COP不要論は、まさに大統領を含め化石燃料会社関係者が多く閣僚を務め、2001年に京都議定書からの脱退を表明した、米ブッシュ政権が強く主張していたものであり、結局は気候変動対策の進展を阻害する効果しかない。なぜなら後述もするように、COPの代替案はないからだ。

 また、斎藤氏の言う「大失敗」の定義がよくわからないものの、もし市民団体がボイコットしてCOPに参加しなかったら、その排出削減が進まないという意味での失敗の程度は、小さくなるどころか、気候変動対策に消極的な国や人々(人権を無視する国々や人々とほぼ重なっている)のやりたい放題になって、逆に大きくなっていただろう。

 その場合、途上国支援などの仕組みの構築も後退したと思われる。それらが、どう「気候正義」の実現につながるのか全くわからない。もちろん、市民団体の影響力は極めて限られている。それでも、会場の中での市民団体の参加やアクションがなかったら

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