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グリーンウォッシュだった西村環境相のスピーチ

改めて国連気候変動会議(COP27)の意味を考える㊦

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 11月15日、COP27閣僚会合において日本の西村環境大臣は、「1.5℃目標の達成が重要であり、日本は、パリ協定の1.5℃目標と整合した長期戦略及びNDC(温室効果ガス削減目標などの国が決定する貢献)を既に策定しました。まだそうしていない国、とりわけ主要経済国に対し、更なる温室効果ガス排出削減を呼びかけます」と述べた。

 この発言は、下記の理由でグリーンウォッシュである。

ドイツのシンクタンク、クライメート・アクション・トラッカーによる1.5度目標に整合する日本の2030年削減目標拡大ドイツのシンクタンク、クライメート・アクション・トラッカーによる1.5度目標に整合する日本の2030年削減目標
 第一に、日本政府の「2030年GHG(恩師効果ガス)排出46%削減(2013年比)」という目標はグラスゴーの1.5℃目標にもパリの2℃目標にも整合していない。各国の削減目標を評価しているドイツの研究機関Climate Action Trackerによると、「世界全体での費用最小」という先進国に有利な負担分担基準で考えた場合でも、1.5℃目標達成のために日本は2013年比で62%削減が必要であり、1人当たり排出量の差異などの「公平性」を考慮した場合には、日本は2030年までに2℃目標達成には約90%、1.5℃目標達成には約120%の削減がそれぞれ必要だとしている。

 第二に、日本の第6次エネルギー基本計画では、2030年の電源構成として石炭火力19%、LNG火力20%、再エネ36~38%を目標としている。しかし、政府機関である電力広域的運営推進機関(OCCTO)の「2022年度供給計画の取りまとめ」によれば、2031年度末の電源構成は石炭32%、LNG30%、石油2%、原子力6%、再エネ29%、電源種不明1%となる。すなわち現状では、「2030年GHG排出46%削減(2013年比)」も未達となる可能性が極めて高い。

 冒頭の西村環境相発言は、わかっていて言ったのか、それともわからずに官僚にただ言わされたのかは、よくわからない。いずれにしても、問題であることは変わりがない。なぜなら、このような発言は、事実と全く異なるメッセージを国内外に発信すると同時に、「日本はこれから何もしないですよ」ということを宣言しているのと同じだからだ。

水素の発電利用やCCSはウソの解決策

 COP27では、〝False solution(ウソの解決策)〟もキーワードであった。これは具体的には、水素・アンモニアと化石燃料の混焼や炭素回収貯留(CCS)などを示している。理由は、これらの新技術は、コストが高く、技術的な課題が多く、CO₂排出の大幅な早期削減につながらないばかりか、結果的により合理的な省エネ・再エネの導入を邪魔するからだ。

 日本政府による信仰にも近い新技術への固執は、結局、既存の火力発電維持という大手電力会社やメーカーの短期的な利益のためであり、実際に、水素・アンモニアの発電利用を積極的に進めている国は、ほぼ日本のみである。

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筆者

明日香壽川

明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

1959年生まれ。東京大学工学系大学院(学術博士)、INSEAD(経営学修士)。電力中央研究所経済社会研究所研究員、京都大学経済研究所客員助教授などを経て現職。専門は環境エネルギー政策。著書に『脱「原発・温暖化」の経済学』(中央経済社、2018年)『クライメート・ジャスティス:温暖化と国際交渉の政治・経済・哲学』(日本評論社、2015年)、『地球温暖化:ほぼすべての質問に答えます!』(岩波書店、2009年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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