下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授
カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ブレイン-マシン インターフェース(BMI)のこれから
イーロン・マスク氏が2016年に創業したニューラリンク(Neuralink)社が、昨年11月30日脳埋め込みデバイスの披露イベントを開催し、半年以内に同社の神経記録・データ送信デバイスを人間の脳に埋め込めるようになると発表した。マスク氏は、自分の頭にもデバイスを埋め込むとさえ語った(ITmedia NEWS、12月1日)。
その後のツイッター買収がらみのお騒がせで、忘れ去られた感もある。が、BMI(脳-機械インターフェース)研究にも関与している筆者としては、きちんと検証しないで捨ておけない。
この装置によって麻痺患者が考えるだけでコンピューターを操作でき、手足も動かせるようになる。盲人は視覚を回復できる。長期的には健常な一般人の脳とコンピューターを接続して、スーパーヒューマンを作るという。同社はこれらの成果を実用化につなげるためのワイアレスインターフェースを開発し、最近FDA(米国食品医薬品局)に治験を申請した。それを受けてマスク氏自身が進行役としてプレゼンしたわけだ(https://www.youtube.com/watch?v=YreDYmXTYi4)。
実に華々しいプレゼンだったが、すでに実現している技術と、実現可能性も見えない「見果てぬ夢」とが混じっている。以下で段階を追って検証しよう。