「閉じるか、閉じないか」それが問題だ
2023年01月20日
新年早々に尾籠(びろう)な話で恐縮だが、トイレの話をしたい。
私は駅や店などのトイレの個室に入ると、かつてあまり見かけなかった貼り紙が気になっている。よくあるのは「長時間の滞在はやめてほしい」というものだ。これはスマートフォンの普及に伴うものだろう。便座に座ってスマートフォン操作に熱中し、必要以上に長く占有してしまった記憶は多くの人にあるのではないか。
空港や新幹線のトイレでは、便器の使い方を英語や中国語で丁寧に説明したものもある。これは特にインバウンドの外国人旅行客を意識したものだ。日本人には当たり前のことであっても、説明が必要ということだろう。
このように、トイレの貼り紙一つでも世相が現れるが、最近、目につくのが、「便器のフタを閉じてください」というものである。
日本レストルーム工業会によると、便器にフタがあるのは、用を足すとき以外は見栄えも良く、間違って物を落とす心配もなく安心ということらしいが、閉じることにそれ以外の積極的な理由があるのだろうか。
そんなことを考えているうちに私は、この種の貼り紙の写真を撮ることが習慣となり、小さなコレクションができてしまっている(「そんな写真を撮っているぐらいなら早く個室から出ろ」という批判は甘んじて受ける)。
コレクションは二つの派に分かれる。
片方は「使わないときは便座のフタを閉めましょう。フタを閉めておくと約15%の省エネになります」「エコにご協力ください。”便座のふた”を閉めましょう!!」という「エコ派」である。
もう一つは「新型コロナウイルス対策 便器のフタを閉めてから水を流してください」「新型コロナウイルス感染拡大防止のため、水を流す際はトイレの蓋(ふた)を閉めてください」という「コロナ派」である。
なぜか、両方の派閥に属する貼り紙には出会ったことがないが、エコすなわち地球温暖化と、新型コロナという、人類が直面する二つの課題の解決に、便器のフタが役立つというのであればすばらしいことだ。だが検証は必要だ
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