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 本欄で「戦争の身体性」を論じたことがある(「戦争 v.2.0 ~情報戦と無人化の先にある新たな展開」)。ウクライナでも戦いが長引くほどに、ドローンなど無人兵器の比重が高まっている。だが戦争の本質が身体性にあるとすると、無人化によって結局どうなるのか、という問題提起だった。

 身体性というのは、「相手側の人員を死傷すること抜きに、戦争は成立しないのでは」という意味だ。どんな戦争も怨念の応酬、報復合戦の色を帯びるが、身内の殺傷なしに怨念とはならないし、相手の損傷なしに報復もありえない。

 だがしかし。戦争には、それと一見正反対の象徴性もあるように見える。象徴性と身体性は両立しないのではないか。この疑問に答え両者の関係を問うことから、戦争心理を理解する枠組みを提供する。それが本稿のねらいだ。結論を先取りすると、こころの潜在領域、つまり無意識的なはたらきを認めることで、いろいろな謎が氷解する。

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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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