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日本学術会議が機能を果たせなくなると何が起こるか 政府だけでなく科学者側にも深刻なリスク

国際的な信用低下を避けるため求められる解決策とは

永野博 政策研究大学院大学客員研究員、日本工学アカデミー顧問

 ここのところ日本学術会議(以下「学術会議」)のあり方が議論されている。学術会議は内閣府におかれる特別の機関の一つと位置づけられているが、これまで政府内の機関としておくのがよいのか、あるいは政府から独立した機関とするのがよいのかについて、何度か議論されてきている。今回の日本学術会議法の改正案をめぐる議論においては、学術会議の法律上の位置づけはこれまでと同様ということになっているが、学術会議会員の選任方式を巡る議論は落ち着く先が見えていない。

 これまで学術会議における後継会員の選考方式は幾度かの変遷を経てはきているが、基本的には学術会議自身において決定してきている。これに対し政府側は、透明性を高めるため外部の組織体によるチェックを行うべきだと考えるようになった。この点は、当時の菅政権による6人の学術会議会員の任命拒否の理由が明らかにされていないことから学術会議側が譲歩できないと考えていることは容易にわかる。

任命拒否問題の解決を求める声明を井上信治・科学技術担当相(当時、写真左)に手渡す日本学術会議の梶田隆章会長=2021年4月、東京・霞が関任命拒否問題の解決を求める声明を井上信治・科学技術担当相(当時、写真左)に手渡す日本学術会議の梶田隆章会長=2021年4月、東京・霞が関

 政府と学術会議との間では、昨年夏以降、政府側内部の問題もあり、今後の学術会議のあり方についての対話が行われることなく、今回の政府側提案が出てきたことから学術会議側には不信感が募っているものと思われる。しかし、このまま双方の間で真摯な議論を行う機会のないまま政府が通常国会に法案を提出するとどうなるのであろうか。学術会議側は会長以下、「重大な決意で臨まざるをえない」としているので、幹部が総辞職する事態も予測される。後任の幹部が就任するということも考えにくい。その場合、学術会議の機能が働かなくなることになる。

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