メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

松田聖子「制服」の世界観は消えた

地球温暖化と桜の花

勝田敏彦 元朝日新聞記者、高エネルギー加速器研究機構広報室長

有平糖の桜=2014年3月
 桜前線が日本列島を北上している。 この時期には京都の某菓子司でこんなあめ細工の茶菓子も売っているそうだが、桜の咲き方、散り方に人生を重ねる私たち日本人にとって、桜が特別な花であることは今さら指摘するまでもない。

温暖化で早まる開花 生まれる“ずれ”

 さて、その桜(ソメイヨシノ)の開花時期がどんどん早まっている。

高エネルギー加速器研究機構構内で咲いた桜=茨城県つくば市
 東京管区気象台によると、今年の東京の開花日は3月14日で、これは平年(3月24日)より10日早かった。昨年(3月20日)より6日早く、2020年、21年と並ぶタイ記録だった。茨城県つくば市にある私の職場でも3月22日の時点で、見ごろが近づいている印象だった。

 原因は地球温暖化の進行による春の気温上昇と考えられている。文部科学省と気象庁が20年12月に公表した「日本の気候変動2020」によると、桜の開花日は1953年以降、10年あたり1.0日の割合で早くなっている。

 桜の開花は日本の卒業、入学の時期に重なるため、別れや出会いに重ねられることも多いが、その早まりが「ずれ」も起こしている。

 興味深い地図が環境省のウェブサイトに載っていた。この地図は桜の4月1日開花ラインの経年変化を描いている。

桜の4月1日の開花ラインの変化(環境省のウェブサイトから)

 1956~85年の平均値から計算した4月1日開花ラインは本州の太平洋沿岸と四国、中国地方あたりを横切っていたが、91~2020年の平年値によるラインは、関東地方北部から北陸西部を通っている。

 東京や大阪など本州の主要都市では1990年ごろから、桜の開花時期は4月から3月へと早まり、桜は入学式や入社式の時期に咲く「出会いの花」ではなく、むしろ卒業式と時期が重なる「別れの花」になったということだ。

桜が枝に咲くころは……

第69回紅白歌合戦で「SEIKO DREAM MEDLEY 2018」を歌う松田聖子さん=2018年12月31日、東京・渋谷のNHKホール
 発表から40年以上たつものの、今も人気の高い松田聖子さんの歌に「制服」という作品がある。クラスメートに恋心を打ち明けられないまま卒業の日を迎えた女子高生の心境を歌ったものだ。松本隆さんによる歌詞にこんなくだりがある。
・・・ログインして読む
(残り:約1376文字/本文:約2294文字)