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単位なし、教員もボランティア 京都大の試み   「おもろいサイエンス」めざす

数理を基盤にした教育プログラム 狙ってもできないことを狙いたい

高橋淑子 京都大学教授(動物発生学)

 昨今の研究費申請時には、「5年後のゴールを定めよ」、そして「本研究での成果が社会にどのように貢献するのかを示せ」という指示が目立つ。未来社会の礎である基礎学術研究の世界では、このような要求(指示)に眉をひそめる研究者が多いのではなかろうか。

ぶっちぎりの成果出すには

 社会の推進力となった基礎研究を振り返ると、そのほとんどに、「あるとき、はっと気がついて」とか、「期待と真逆の結果が出たことがきっかけとなった」とかいう回顧録がついてくる。ノーベル賞受賞者の山中伸弥氏や大隅良典氏も同じようなことを繰り返し述べておられる。つまり、5年後のゴールをきめてその達成度で評価するとか社会にどう貢献するのかをつらつら並べよとかは、あまり意味がないどころか、若者の学術魂を骨抜きにしてしまう。

京都大学

 言い換えれば、素晴らしい基礎研究は必ずや社会の役に立つのであるから、わざわざそれを「とってつけたような」言葉で書かせる必要はないはずだ。経済界からのプレッシャーがひとつの原因であるらしいが、経済界には是非とも学術の本質と未来社会への貢献についてさらなる理解をお願いしたいところだ。学術のこのような捉え方の違いが、科学先進国か後進国かを決めると言っても良いだろう。

 ゴールを決めて狙ったとおりの成果を出すこと自体は、悪いことではないものの、そのゴールとは、少々知恵のある研究者であれば誰でもイメージできるものだ。つまり平均的能力のある研究者であれば

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