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鯨肉と縁遠くなるニッポンは、いつまで捕鯨に税金を投入し続けるのか

IWCを脱退して4年たった商業捕鯨の現在地

佐久間 淳子 フリージャーナリスト

 日本が商業捕鯨の再開を実現させてから4度めの春が来た。捕鯨業者は、すでに今年の操業を始めている。

 現在の商業捕鯨の状況はどうなっているのか、「日本なき後」の国際捕鯨委員会(IWC)はどうなっているのか。税金で延命し続けた捕鯨の現状について、公開資料の行間を読み込んでみよう。その上で、「捕鯨問題の議論」に必要な論点を整理しておくことにする。

母船式捕鯨は堅調、沿岸捕鯨は不振

下関港に荷揚げされる鯨肉=2022年11月12日、山口県下関市、中野英治さん撮影  下関港に荷揚げされる鯨肉=2022年11月12日、山口県下関市、中野英治さん撮影
 日本の捕鯨事業者は、大きく2種類の業態に分けられる。ひとつは、クジラを捕鯨砲で捕獲する大型の捕鯨船と、そのクジラを解体して冷凍できる捕鯨母船が組んで操業する母船式捕鯨。南極海で調査捕鯨をしていたのがこれ。現在は、捕鯨母船1隻と捕鯨船3隻を擁する共同船舶(株)のみだ。

 もうひとつは、48トン未満の小型の捕鯨船に捕鯨砲を装備し、捕ったクジラを陸上に設けた解体場でバラす基地式捕鯨(沿岸捕鯨)。現状では捕鯨船が5隻、それを所有する事業体(個人を含む)は四つある。

 1987年にIWC加盟国たる日本は商業捕鯨の一時中止決定を受け入れた。再び商業捕鯨ができるようになったのは、2019年7月。日本がIWCを脱退し、国際捕鯨取締条約の下での捕獲規制から自由になったからだ。だが南極海などの公海での捕鯨はできなくなった。日本政府が許可したのは日本の200カイリの範囲内である。

 商業捕鯨できる鯨種は、イワシクジラ、ニタリクジラ、ミンククジラの3種。母船式捕鯨はミンククジラを基地式捕鯨に譲り、イワシクジラとニタリクジラに専念している。捕獲許可頭数(捕獲枠)は鯨種ごとに決められ、毎年見直されている。

 算出する計算式は、国際捕鯨委員会が開発したRMP(改訂版管理方式)を採用し、算出された捕獲可能頭数から、定置網で混獲される頭数と水産庁留保分を差し引いて捕鯨事業者に捕獲枠が与えられている。順調に捕獲が進めば、留保分から順次捕獲枠に加えていく。

 この方式で、母船式捕鯨は与えられた捕獲枠を2020年以降完全に消化している。ニタリクジラ187頭、イワシクジラ25頭(今年は24頭)。初年こそミンククジラの捕獲枠20頭のところを9頭捕り残したが、より大型で値の付く部位が採れるニタリクジラとイワシクジラは捕りきった。翌年からはミンククジラの捕獲枠は基地式捕鯨に譲り渡した体だ。

 彼らが手がけた調査捕鯨はもっぱら太平洋の公海だったので、200カイリ内での商業捕鯨は「漁場探し」から始まった。初年(2019年)は、紀州半島沖や房総半島沖でも、翌2020年は2~3月に小笠原諸島周辺でも操業したが、大半は房総半島以北、特にイワシクジラは釧路沖で9月以降に捕獲している。狙うべき時期と海域が絞られ、より大きい個体を効率的に捕れるようになってきたようだ。

200カイリ内の捕鯨だけでは立ち行かない

 本来は冷凍鯨肉を供給するのが母船式捕鯨だが、商業捕鯨再開以後は、年に何回かは生鮮肉を市場に流し、競りにかけて最高キロ

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