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一人ひとりを大事にするということ

「機長は後ろを見て飛ぶ」から学ぶ

三田地真実 行動評論家/言語聴覚士

拡大離陸するソラシドエア機=2022年1月、宮崎空港
 「本日のご搭乗、誠にありがとうございます。本日は満席で、174名のお客様と2人のかわいい赤ちゃんがご搭乗くださっています」

 3月末に沖縄から東京に向かう飛行機の機長さんからのアナウンスに、はっと耳をそばだてた。国内外、飛行機に乗る機会もなくはない私は、元来、飛行機好きということもあって、機長さんのアナウンスを聞くのは大好きだ。

174名のお客様と2人の赤ちゃん

 しかし、これまで聞いた数多くの機長アナウンスで、乗客の「人数」を正確に伝えてくれたことはなかったように思う。だから「はっと」したのだ。

 おおかた「満席でございます」のアナウンスはあっても、実際「何人」乗っているのかはわからないまま、乗客は出発し、そして到着する。それがごくごく当たり前ではないだろうか。

 それが、ひとたび「174名と2人のかわいい赤ちゃん」と言われた瞬間、何とも言えない「一体感」が湧き起こったのだ。

 「そうか、今日は174人+2人で一緒に飛んでいるんだ!」という感情が「具体的な数」で引き起こされたことを不思議に感じた。加えて、私も隣に居る人もみんな1人として数えられていて、このフライトだけではあるが「同じ運命共同体なんだ!(実際、そうである)」と急に、他の乗客が意味を持ったリアルな存在になった。

 このエピソードから鮮やかに思い出された別のエピソードがある。それは

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筆者

三田地真実

三田地真実(みたち・まみ) 行動評論家/言語聴覚士

教員、言語聴覚士として勤務後、渡米。米国オレゴン大学教育学部博士課程修了(Ph.D.)。専門は応用行動分析学・ファシリテーション論。2016年からオンライン会議システムを使ったワークショップや授業を精力的に行っている。2011年星槎大学共生科学部教授、2013年から23年3月まで同大学大学院教授。2023年4月から、教育ファシリテーション研究所主任研究員。著書に「保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック」など。教育雑誌連載と連動した「教職いろはがるた」(https://youtu.be/_txncbvL8XE)の動画配信中!

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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