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一人ひとりを大事にするということ

「機長は後ろを見て飛ぶ」から学ぶ

三田地真実 行動評論家/言語聴覚士

離陸するソラシドエア機=2022年1月、宮崎空港
 「本日のご搭乗、誠にありがとうございます。本日は満席で、174名のお客様と2人のかわいい赤ちゃんがご搭乗くださっています」

 3月末に沖縄から東京に向かう飛行機の機長さんからのアナウンスに、はっと耳をそばだてた。国内外、飛行機に乗る機会もなくはない私は、元来、飛行機好きということもあって、機長さんのアナウンスを聞くのは大好きだ。

174名のお客様と2人の赤ちゃん

 しかし、これまで聞いた数多くの機長アナウンスで、乗客の「人数」を正確に伝えてくれたことはなかったように思う。だから「はっと」したのだ。

 おおかた「満席でございます」のアナウンスはあっても、実際「何人」乗っているのかはわからないまま、乗客は出発し、そして到着する。それがごくごく当たり前ではないだろうか。

 それが、ひとたび「174名と2人のかわいい赤ちゃん」と言われた瞬間、何とも言えない「一体感」が湧き起こったのだ。

 「そうか、今日は174人+2人で一緒に飛んでいるんだ!」という感情が「具体的な数」で引き起こされたことを不思議に感じた。加えて、私も隣に居る人もみんな1人として数えられていて、このフライトだけではあるが「同じ運命共同体なんだ!(実際、そうである)」と急に、他の乗客が意味を持ったリアルな存在になった。

 このエピソードから鮮やかに思い出された別のエピソードがある。それは

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