メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「円安の菅」の長き闘い

原真人

 政府と日本銀行による6年半ぶりの円売りドル買い介入は、最近の外国為替市場での円買いによって一儲けしていた投資ファンドや投機家たちの鼻をあかすには、十分すぎるショック療法だった。彼らは民主党代表選で菅直人首相が勝利したタイミングを狙って、ほとんど無警戒にさらなる円買いを進めようとした。その出鼻で、よもや逆襲を受けるとは想像していなかっただろう。

 市場では民主党代表選を争った2人の立ち位置をきっちり見極め、選挙が終わるのを待ちかまえて売買しようとしていた。その見立ては、「債券の菅」「株の小沢」だ。大規模な景気対策に前向きだった小沢氏が勝てば株は「買い」。だが、財政をさらに悪化させかねないので国債は「売り」。逆に菅氏が勝てば、株にはプラス要素がないものの、財政再建に前向きなので債券は「買い」といった具合だ。

 この見立ては外為市場にもあったようだ。さしづめ「円高の菅」と「円安の小沢」と呼ぶことができる。8月から急激に進んでいた円高ドル安に対し、ここまで手をこまぬいていた菅首相。これに対し、小沢一郎氏は「市場介入も辞さず」と強調してきた。このため、外為市場には小沢勝利の場合には介入ありうべし、との警戒感があったらしい。それに比べ、菅勝利のときの介入には心の準備がほとんど無かったようだ。その結果、介入のサプライズ効果は満点だったのである。

 だが、思い出してほしい。菅氏が今年1月に財務相に就任した際、記者会見で次のように述べたことを。

 「経済界からは90円台のできれば半ばあたりが、貿易の関係で適切じゃないかという見方が多い。為替が日本経済に与えるいろいろな影響を考えながら適切な水準になるように、日銀との連携もふくめて、時代時代にあわせて努力しないといけない。現状はドバイショックのころに比べればかなり円安になっている。もう少し円安の方向に進めばいいなと思っている」

 この発言からも分かるように、菅氏は基本的に円安論者だ。そこが最近はすっかり忘れられていたのではないか。もともと経済政策に明るくなかった菅氏だが、

・・・ログインして読む
(残り:約1213文字/本文:約2074文字)