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ブロック化も軍拡も滅びの道だった

小此木潔

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 そんな時代ではありえない、と思いつつも、あえて言っておきたい。ブロック化も軍拡も滅びの道であり、世界経済の回復と安定化のためには自由貿易の拡大と、軍縮・非核化について各国の協調を進めることが何よりも大切な局面である。

 「通貨安」競争や、近隣窮乏化、資源ナショナリズムといった危険因子をはびこらせないよう、英知を結集したい。そのためにはソウルで開くG20首脳会合の成功はもとより、横浜でのAPEC首脳会議の成功もきわめて重要であり、日本はそれぞれにおいて自由貿易の拡大と協調再構築に向けて力を尽くさなければならない。

 戦前には金本位制が崩壊し、国際通貨体制が混乱する中で、世界恐慌からの回復がなかなか進まないうちに、ドイツの再軍備政策にあおられる形で世界の軍拡競争、植民地再分割、為替切り下げ競争、ブロック経済化が進んでいった。結果は悲惨な第二次大戦であった。その当時に比べて似ている面もあるが、状況がかなり違うことに期待を寄せたい。

 似ている面としては、100年に一度の世界経済危機。そこからの回復の遅れ、そして為替安をテコにした輸出振興策、といったところだ。しかし、違っているのは、

(1)戦前の過ちを繰り返すまいと、G20による協調で財政出動と金融緩和が成果を上げている

(2)米国と中国の関係が象徴するように相互依存が深まり、ブロック化しようにもできにくくなっている

(3)IMFや世界銀行、WTOなどのほか、APECやASEMなど多国間協議の場がある

(4)FTAの拡大が各国にとって利益であるとの認識が広がっている

といったことではないだろうか。

 こうして類似点と相違点を考慮してみると、戦前の二の舞とはならないはずだ。

 しかし、

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