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TPP政局が招きかねない小沢派の解体

山下一仁

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 TPP参加に積極的な菅首相、仙石官房長官、前原外務大臣らに対し、民主党の山岡賢次副代表が11月30日、TPPに批判的な議員からなる「食料自給率の向上を目指す議員連盟」を発足させた。鳩山由紀夫前首相、田中真紀子元外相、原口一博前総務相、山田正彦前農相ら小沢一郎元代表に近い議員を中心に55人が設立総会に出席し、菅政権への「批判集会」の様相となったと報道された。この議員連盟の中には「TPP政局だ」と主張する議員もいたと言われている。

 このような亀裂が生じるのは、民主党が新自由主義的な考え方から旧来の自民党的または社会党的な考え方まで雑多な主義主張を持つ人たちからなる混成部隊である以上当然である。しかし、これには意外なネジレがある。それが小沢グループを解体しかねないのである。これを説明しよう。

 小沢元代表が率いる自由党が合流するまでの民主党の農業政策は、都市型政党としての性格を反映して、農業の構造改革を積極的に推進しようとしたものだった。2001年の参議院選挙での選挙公約では、「事実上強制となっている米の減反については選択制とし、……新たな所得政策の対象を農産物自由化の影響を最も大きく受ける専業的農家」とし、2003年のマニフェストでは、「食料の安定生産・安定供給を担う農業経営体を対象に、直接支援・直接支払制度を導入します」とした。

 ここまでは、「米の減反廃止→価格引下げによる兼業農家退出→専業農家に対象を絞った直接支払いによって農地を専業農家に集積」して構造改革を推進するという、私の提案のとおりだった。実は、私が2000年に出版した『WTOと農政改革』という著書を読んでいた人が、民主党の中にいたのだ。私自身依頼を受けて民主党で講演したこともあった。今の戸別所得補償制度からみるとありがたくない話だが、当時からいる民主党関係者の中には、今でも「『戸別所得補償』の発案者は山下さんだ」と言う人がいる。

 しかし、

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