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意外な大物税制改正の情けない理由

原真人

 来年度の「税制改正大綱」が先週、閣議決定された。法人税5%減税をはじめ、意外に大物ぞろいのこの税制改正。その立役者は「消費税増税の回避エネルギー」だ。

 この税制改正を例えていうなら、次のような構図だろうか。

 抜本的な大手術が必要な重病患者が「手術を受ける踏ん切りだけは、まだつかない」と医者に先送りを頼んだ。ただ病状悪化も心配だ。そこで、これまで避けてきた苦い薬もちゃんと飲み、リハビリにも積極的に取り組むことだけは覚悟を決めた。

 つまり菅政権は消費税増税という抜本改革は先送りをした。ただ、それでは財政がにっちもさっちもいかなくなる。そこで、これまで積み残されていた税制改正メニューを片っ端から拾い上げ、収支尻のつじつまをつけようとしたのだ。

 菅直人首相は「消費税10%」に言及しながら、参院選敗北で消費税問題に口を閉ざしてしまった。この税制改正でも完全にこの問題を封印した。政府税調でも消費税はほとんど議論の対象にならなかった。情けないことだ。しかし、結果的にその消費税回避エネルギーが、長年の懸案だった他の税制案件の「在庫一掃」へと転化していったのは皮肉だ。

 まず法人税の減税。国際的に高すぎる税率は、国内雇用を維持するためにも引き下げは避けられない情勢だった。本来なら消費税増税とセットで実現すべきものだろうが、消費増税のめどが立たないなかでも、いよいよ法人減税だけを先行せざるをえなくなった。経済界の強い批判を背に、雇用問題への影響が心配されたからだ。菅首相が5%幅の減税を決断したのは当然だろう。しかも、

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