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「偽りの夜明け」にだまされるな

小此木潔

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 米国景気はクリスマス商戦に示された消費の予想外の好調や、企業の設備投資の回復ぶりに示されるように、明るさを取り戻しつつある。だが、それはあくまでも緩やかな回復にすぎないし、それで雇用が力強く増加するようなものでないだろう。

 これを本物の回復、つまり持続可能性に富んだ力強い自律回復の始まりであるととらえたり、それゆえに米国は財政再建のために歳出削減に大なたを振るうべきであるとか、ましてや失業者対策や低所得層向けの対策は縮小してよいなどと考えたりするとしたら、間違いである。この回復はなお、巨額の財政出動と米国史上例のない超金融緩和政策という政府および中央銀行のカンフル剤によってもたらされたものにすぎず、いわばまだ「偽りの夜明け」ではないかと警戒つつ、回復に向けた政策努力を継続しなくてはいけない、と私は考える。

 1月7日に発表された昨年12月の雇用統計でも、そうした景気の弱さが見て取れる。

 失業率は9・4%で事前の市場予測より改善が進んでいることが示され、非農業部門の雇用増が10万3000人だったことも朗報ではあるが、これは市場予測(約15万人増)を下回った。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が議会で証言したように、この数字は力強い持続的な景気回復を期待させる内容ではない。

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