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[17]グリー高収益の闇/児童・少女378人を犯罪者の餌食にしたSNS

大鹿靖明 ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

 グリー(GREE)は、「無料」をうたった携帯ゲームとソーシャル・ネットワーキングサービス(SNS)で急成長する新興のIT企業である。民放各局のCMで知った人も多いだろう。それぐらい、つまり、広告不況で経営が悪化した民放各局にとって干天の慈雨となるぐらい、グリーの宣伝攻勢はすさまじかった。今期(2011年6月期)決算は、売上高が540~600億円に、最終黒字は159~177億円に、それぞれなると予想している。売上高最終利益率は約3割という驚異的な高収益ぶりだ。だが、その快進撃は子どもたちや少女たちの犠牲に支えられていた。

 グリーは、ソニー・コミュニケーションネットワーク(現ソネットエンタテインメント)や楽天に勤めていた田中良和氏(34)が2004年2月、いまのサービスの元となるSNS「GREE」の運営を始めたことがルーツだ。同年12月に東京都港区白金に資本金1000万円の株式会社として法人化している。

 創業第1期の2005年6月期決算はわずか2200万円の売上高しかなかったが、携帯キャリアのKDDI(au)やNTTドコモと組んだことで会員数を急増させ、2011年6月期決算の売上高は540~600億円になる見通しだ。わずか6年余で売上高は3000倍近く増えた計算になる。07年3月に100万人を突破した会員数は昨年9月時点で2246万人を数えている。この間、東証マザーズに上場し、いまや東証一部に昇格、創業社長である田中氏は保有株式だけで約1500億円もの資産を有するに至った(2月24日時点)

 高成長の要因の一つは、「無料」を大々的にうたってきたゲームだ。確かに無料で遊べる部分はあるのだが、遊び始めると機能の強化やアイテムの購入を勧められ、それを選ぶと次々に課金されてしまう。要は、無料をエサに誘導しているのだ。これにひっかかりやすいのが子どもたちである。無料だと思っていたら後で法外な金額を請求された、という事例が後を絶たない。国民生活センターによると、09年度にこうした相談件数(グリー以外も含む)は555件あり、10年度も12月末時点で447件あり、このままの調子だと前年度を上回りそうだ。

 全国の消費者生活相談窓口に寄せられる苦情にはこんなものがある。

「共稼ぎだったので親戚の家に小学校低学年の子どもを預け、携帯電話を貸して無料ゲームで遊ばせていたら、あとで3万円請求された。子どもには画面に出てくる『購入』の意味が、お金を払うということだとは分からなかった」(09年春、東京)

 「7歳の娘に携帯を貸して無料ゲームで遊ばせていたら、アイテムの購入を相次いで画面上で勧められ、それをクリックしているうちに3万5000円も請求された」(10年12月、関東)

 「夕食の支度中に携帯を小2の娘に貸していたら、携帯でアバターの衣類を買い集め、翌月の請求が10万円を超えた」(09年夏、東京)

 こうした事例は枚挙にいとまがない。国民生活センター情報部の担当者は「親が子供に携帯電話を貸しあたえ、無料という宣伝を真に受けてタダだと鵜呑みにしてやっていると、後でびっくりするような金額を請求される。こういうのがパターンですね」と指摘する。もちろん、こうした相談事案のすべてがグリーというわけではなく、

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