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中東の政変連鎖で見えた、石油=ドル基軸体制の不安

木代泰之

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 リビア情勢が深刻になった2月24日、東京外国為替市場は3週間ぶりに1ドル=81円台のドル安(円高)に突入した。ドルの軟調は石油価格上昇と連動しており、投資家はリスク回避のためドル売りに走った。かつては「有事のドル」と呼ばれ、世界市場がリスク回避に動くときはドル高になるのが常だった。

 今回は事情がまったく違う。ドルが基軸通貨であるための条件は、石油など国際商品が円滑にドルで決済されていることだ。だが、リビアは内戦終結後にできる新政権が親米か反米か、どのような石油戦略をとるのか、まだ読める段階ではない。この不安が今回のドル安を招いた。米国の石油戦略が安定しない限り、ドル基軸体制を脅かす事態が繰り返し起きる懸念はなくならない。

 「不安定な民主主義より、独裁を選んだ」。米国の中東戦略はずっとこう言われてきた。英ファイナンシャル・タイムズによれば「カダフィ大佐は残忍な暴君だが、欧米にとっては役に立つビジネスパートナーであった」となる。

 このため中東の国民には、独裁を政治・軍事面で支えてきた米国への嫌悪感がある。米国は今回、「民主化」という点で反政府運動を精神的に支持したが、独裁政権を倒したのは血を流した民衆である。新しく登場する政権が、米国の助言より国民の言い分に耳を傾けることは大いにありうる。

 ドルと石油はしっかり結びついている。米国は1971年のニクソンショックでドルと金の交換を停止し、

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